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新生面

2月17日付 2017年02月17日

 ノーベル賞作家ガルシア・マルケス氏の『予告された殺人の記録』は、婚礼をめぐって南米の田舎町で起きた事件を描いている▼「自分が殺される日、サンティアゴ・ナサールは、司教が船で着くのを待つために、朝五時半に起きた」。花嫁の兄の犯行予告により、町の多くの人たちは主人公の青年が数時間後に殺されることを予感している。だが、本人だけは自分の運命を知らない▼マレーシアで死亡した金正男[キムジョンナム]氏の場合は、小説と違って常に自分の死を予感していたのではなかったか。少なくとも2004年ごろから度々、命を狙われているというニュースが流れていた。殺害は北朝鮮指導部による指示ではないかとみられている▼数奇な運命には違いない。北朝鮮の故金正日[ジョンイル]総書記の長男として生まれ、ロシアとスイスで教育を受けた。英・露・仏語に通じ、北朝鮮で数少ない「開明派」だったという。金総書記の後継者レースから外され、北京やマカオなどで生活。中国の保護を受け、複数の女性との間に3人の子がいると伝えられていた▼2011年には日本の新聞記者のインタビューに「(あなたと)糸が切れないようにしたいですね」と人懐っこく語っている。北朝鮮の反応を恐れながらも取材に応じたのは、自分の存在が消えてなくなる不安からだったのかもしれない▼体制を継承した異母弟の正恩[ジョンウン]氏の意向が暗殺にどれほど関与したかは定かでない。だが、祖国を追われ、権力に邪魔者として消されてしまった人間の底知れぬ孤独を思う。


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