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新生面

2月7日付 2017年02月07日

 雲一つない空から、雨が落ちてくることがある。今の季節なら雪もあろう。遠い雨雲から飛んできたり、雨滴が地上に落ちるまでに雨雲が移動したりすることで生じる▼天気雨、きつねの嫁入りと言われるその現象は「天泣」[てんきゅう]とも呼ぶ。屈託なく見える空にも悲しみがあり、地上を憂いての涙ということか▼天気ばかりを気にしていたせいでもないけれど、数日通らなかった道沿いの見慣れた住宅が不意になくなり、驚かされる。熊本地震で傷ついた住宅の公費解体が行われており、県によれば昨年末時点で1万1千棟以上の家屋が解体されたという。ただ進捗[しんちょく]率はまだ35%余り。これからもそんな風景を目にすることが増えそうだ▼それにしてもこの間まで丈夫そうだった家が突如として幕に覆われ、瞬く間に解体されていく様を見るのは寂しい。少しばかり見晴らしのよくなった街並みを眺め、そこに確かにあったはずの暮らしを思う▼外見からうかがい知れぬのは、傷ついた人の心も同じだろう。県精神保健福祉センターの矢田部裕介医師は、本紙夕刊で被災者の継続的な心のケアが大切として話を聞く際のポイント「かきくけこ」を挙げている。か「確認」き「共感」く「繰り返し」け「傾聴」こ「肯定」。もう一つ、「こ」には「心から」も加えておきたい▼変わる街並みは少しずつ進む復興の現れではあろうが、一方で大きなものを失い、ためらい立ち止まる人たちがいることを忘れてはなるまい。悲しい雨はもう、この地には要らないのだ。


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