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身近にある食材無駄なく 山鹿市・日輪寺 伝統守り精進料理手作り 「食は自分知ること」 |
身近にあるものを、大切に食べる。当たり前のことも、忙しい生活の中ではおろそかになりがち。この季節は特に、暑さに負け、好きなものや冷たいものばかり食べて体調を崩しやすい。そんな現代にあって、厳しい伝統を守り続けているのが寺の食事だ。そのひとつ、禅宗である曹洞宗の食事の精進料理は、肉や魚を一切使わないことで知られる。その基本は、身近にある食材を生かし、手作りすることだという。一般向けにも精進料理を出している、山鹿市杉の日輪寺を訪ねた。(辻尚宏)
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| 一般客向けの3000円の料理。豪華さは追求していないが、見た目にもバラエティーに富んでいる |
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| 日輪寺の境内にある一般客向けの食事処。特別な作法は必要ない |
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木々に囲まれた、日輪寺の食事処「南無」 |
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| 料理を作る日輪寺の住職、荒木正道さん(右)と息子の孝尚さん。身近な素材を最大限生かすことを心掛けている=山鹿市
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九四〇年に開かれたという寺は、国道3号から少し入った所にあった。赤穂義士の遺髪塔があることや、ツツジの名所としても知られる。境内に建てられた食事処の調理場をのぞくと、住職の荒木正道さん(54)と、息子の孝尚さん(26)が調理の真っ最中だった。
「素材はこの辺りで採れるものばかり。特別なものはありませんよ」と正道さん。寺の畑や裏山で野菜や野草、キノコなどを採り、献立を決めているという。
■バラエティー
作ってもらったのは、コンニャクの刺し身と空揚げ、トウモロコシをすりつぶしてクズ(葛)で固めた豆腐、ゼンマイとタケノコのいため物、ヨモギやドクダミ、タンポポの葉のてんぷらなど。彩りや味、食感もバラエティー豊かだ。カボチャやシイタケの煮しめ、酢の物、ナス田楽などもある。「家庭の延長線上にある料理」(正道さん)と言うが、むしろ新鮮な感じさえする。
みそ汁の具にはオクラや豆腐。ご飯はおかゆ。メニューには、すりつぶしたり、細かく刻んだものが多く、消化にもよさそうだ。
精進料理では、タンパク質は豆類などから取る。総カロリーも揚げ物の量で調節しながら、全体的な栄養バランスを取ることができるという。
肉や魚は使わないものの、「バランスに配慮し、手間をかけて作ったものをいただいていれば、生きる上で支障はありません」と正道さん。若い孝尚さんも「慣れれば体調も良い」と言い、夏ばて知らずだ。
野菜は肉より火が通りにくいため、調理には十分な時間をかける。早いときは朝六時から取り掛かる。さらに重要なのは、皮や切れ端も捨てずに利用することだ。「命をいただくわけだから決して粗末にはできない」と正道さん。
「現代は、気軽に食べられるものが身近にありすぎる。時間に追われ、作るのも食べるのも余裕がないから、仕方ない面もある。でも、そんな食生活を見つめ直す時間もたまには必要でしょうね」
■意識の変化も
寺には、東京など遠方からも客が訪れる。以前は、春と秋の観光シーズンに集中していたが、最近は年間を通して来るようになった。食に対する「意識の変化がうかがえる」という。
強制しているわけではないが、食べにくる人のほとんどは自然と正座をし、自分なりの礼儀で食べるそうだ。山鹿市菊鹿町から、友人と三人で訪れた主婦前田やす子さん(57)は「手間暇かけて作られた食事を味わうと、食べ物で生かされていることを実感します」と話した。
正道さんは「中道の精神が大事だと仏教では教えられますが、言い換えればバランスですね」と語る。
「人間にとって、もちろん肉や魚も適度に必要。成長期の子どもは特にね。食事はおいしく食べるのが一番です。ただ、欲しいからとか、食べたいだけ食べるのではなく、自分で意味を知ったり、量を控えたりすることも考えてほしい。食べることとは、まさに、自分自身を知ることなんです」
■素材の香りや味生かす シンプルで薄味が基本
曹洞宗の修行の中から発展してきた精進料理。荒木正道さんによると、「正」と「邪」があり、「邪」は卵を使うほか、カツオ節からだしを取ることもある。これに対し「正」は卵を使わず、だしも昆布やシイタケからのみ。日輪寺では「正」の調理法を受け継いでいるという。ネギやニラなどにおいの強い野菜も使わない。
味付けは塩、しょうゆ、酒、みそ、みりんなどを使い、シンプルで薄味が基本。素材そのものの香りや味を損なわないようにしている。見た目も豪華さを追求するのではなく、葉や花を添えて彩りよくしている。
食事を作り、食べることも重要な修行とされる曹洞宗。「本来は、食事の前には五観の偈(ごかんのげ)というお唱えをします」と孝尚さん。食事ができるまでにかかわった人々や食材に感謝し、食べるのにふさわしいだけの功徳を積んだかどうか、自分の行いを反省する、などの意味があるという。
修行では、食べ終わって後片付けをするまで、一切の会話は禁止。ただ、一般客はもちろん会話もOK。「特別な作法は必要ありません」
◇メモ 精進料理は予約制。一人前三千円から。不定休。8月は25日から。時間はおおむね午前11時半〜午後9時。(電)0968(44)4383。
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| 熊本日日新聞2007年8月22日朝刊 |
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