 |
| 味の素の「食のガーデン」で提供された野菜の苗を鉢に植える子どもたち=5月上旬、宇城市の豊川小 |
「朝ご飯にみそ汁を食べましたか」。池田屋醸造(熊本市)のみそ製造技能士塩津美智子さん(65)が小学生にこう尋ねると、手を挙げるのはクラスの三分の一ほど。「三十五人中、五人しか挙がらなかったこともある」と塩津さん。
二十七年前からみそ造り教室を開き、依頼に応じて小・中学校で教えている。これまで約二十校に延べ三十回も出張した。子どもたちはこうじ、生の大豆などの材料を混ぜて持ち帰り、三カ月後に出来上がりを家庭で食べる。季節をまたぐ時間を使った珍しい授業だ。
「大人でもみその材料を知らない人が少なくない。店の利益にはつながらなくても、みそに親しんでもらえれば」と塩津さんは話す。
■企業名伏せる
健康につながる発酵食材として見直されているみそ。こうした日本食を地道に守る活動を続ける地場企業に見習うように、「食」のあり方を見直す動きが大手企業でも出始めている。
「ナスのてんぷらが好き」「好き嫌いをなくしたいので苦手なピーマンを育てたい」―。宇城市松橋町の豊川小(岩田讓校長)。五月上旬、三、四年生七十三人が育てたい野菜を選び「いっぱい実をならせる」などの目標を立てた。
授業で使われた野菜の苗や鉢は、実は調味料商品を得意とする味の素(東京都中央区)が無償で提供したものだ。同社は二〇〇四年から「食のガーデン」と題し、今年は全国の百五十校に贈った。
授業では会社名は出ず、学校と企業をつないだのは熊本市と東京都に事務所を置くNPO法人「国際理解教育情報センター」だった。十社でCSR(企業の社会的責任)活動のアドバイザーを務める法人代表の藤井誠さん(44)は「直接の利益が目的ではないので、会社名は前面に出していない。子どもたちに野菜に関心を持ってもらい、食生活が改善されることが目的」と語り、食文化が崩れる危機感が食品企業に広がり、突き動かし始めた現状を説明する。
■価値高める手段
この危機感は、米国で「肥満の原因」と批判もあったファストフード業者にも共通する。日本マクドナルド(東京都新宿区)は「ハンバーガーだけでなく、いろんな食べ物をバランスよく食べることの大切さを知ってもらいたい」として「食育の時間」と題したインターネットのサイトを〇五年七月に開設。サイトを使った授業映像DVDを三千枚作製し、都道府県教委などにも配布した。
味の素や日本マクドナルドの活動は“将来の消費者”づくりをにらんだ長期企業戦略の一つとも見える。ただ、「商品を売る」ことにとどまらず、「食生活の基本を守ることは、企業にとっても安定的な経営につながる」と藤井代表。
個人投資家への説明でアピールするなど、企業価値を高める有効な手段にもなる。「食育も含めた社会貢献は、企業の成長に欠かせない」と藤井代表はつなぐ。高齢社会の中で食育、食文化を見直そうとする企業は増えてきそうだ。(森本修代)
=第1部終わり |
| 熊本日日新聞2007年6月20日朝刊 |
|