食考くまもと2007  

(3)新たな市場 予防医学で個人需要狙う

「ミネラル検査報告書」を手にするコープ熊本の新井常務。報告書には、不足するミネラルを補充する食材が紹介されている=益城町
 「このデータによると私はカルシウムが特に不足しているようです。プロセスチーズやミズナ、牛乳などを取るよう指摘してくれています」

  上益城郡益城町のコープ熊本学校生活協同組合の本部。夕食が遅く不規則な生活が気になっていた新井知海常務理事(42)は、もらったばかりのA4サイズの自身の「ミネラル検査報告書」を手に、不足とされたミネラルを補う“お薦め食材”の一覧に目を通した。そこには野菜や乳製品など七種類の食材の写真と、それぞれのカルシウムの含有量が表示されていた。

 ■毛髪から測定

 この聞き慣れない「ミネラル分析」とは、コープ熊本と食品関連ベンチャー果実堂(熊本市)が三月から始めた新しい個人向け“食と健康”事業だ。マグネシウムや鉄、亜鉛など七種類の体内ミネラルバランスを毛髪で測定。その結果を元に、不足するミネラルを補充する食品を紹介、食材購入に利用してもらう新しいビジネスモデル。新井常務も試しに検査してみた一人だった。

 六万二千人を抱える組合として組合員への健康サービスの提案が狙いだが、食品関連で年間四十七億円(二〇〇六年三月期)を売り上げる県内大手流通業者として特色を付加したいという戦略の一つでもある。

 「もはや安心・安全の食の提供は供給側の最低限のライン。食材を並べて売ることから一歩出て、『あなたはこれを食べた方がいいですよ』という提案が消費者の新たな購買動機つながる」と新井常務。ミネラル分析費は六千円かかるが、五月末までに約五十人が申し込んだ。コープ熊本は年間一万人まで拡大することが当面の目標だ。

 ■有用な成分は?

 技術を提案した果実堂は、検査対象とするミネラルが体にどう必要とされているか、科学的裏付け作業も進める計画。「食育に関心が高まっているが、成長期の子どもに不足している栄養素が何かをきちんと把握することが求められる。漠然としていたミネラルの必要性も確かめる必要もある。例えば、味覚障害は亜鉛不足が関与するとされているが、それを示す具体的なデータがない」と井出剛社長(46)。五月からは、ミネラルバランスと味覚障害の関係を探る調査を熊本大の学生を被験者に始めた。

 さらに、そのミネラルを提供する食材の発掘にも事業を拡大する。発芽後十〜三十日の有機栽培した野菜の幼葉が、通常の野菜よりミネラルが多いことに着目。阿蘇郡西原村を中心に七農家と契約、有機「ベビーリーフ」の取り扱いも始めた。

 販売先はコープ熊本をはじめ大手スーパーなど六十社にも上る。この一年で取引先を十倍に増やす勢いだ。ミネラル分析や機能調査を手掛ける姿勢が評価された一面でもある。

 同社の〇七年度の売上高予測は二億七千万円。ミネラル検査とミネラル食材販売で、二年後には四倍以上に拡大する目標を掲げ、証券取引市場への上場も視野に入れる。

  「安心・安全」を追い求める消費者ニーズに加え、予防医学の視点を取り入れて、潜在する究極の「食と健康」市場を掘り起こそうという試みが具体化しつつある。(松本敦)

熊本日日新聞2007年6月14日朝刊

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