食考くまもと2007  

(2)ベンチャー企業 高い技術で事業化に活路

砂取小の児童
崇城大の大庭研究室でヤーコンと紫イモの発酵実験をするM2ウィンの社員=熊本市
 熊本市の崇城大生物生命学部棟三階にある研究室。昨年五月から年末にかけて連日遅くまで明かりがともった。大庭理一郎教授(65)と学生、設立したばかりの食品ベンチャー企業M2ウィン(同市)の社員が菊池産ヤーコンと、西原村で栽培した紫イモを使い発酵実験を繰り返していた。

 千回強の実験の末、乳酸菌やビフィズ菌などいわゆる善玉菌の動きを増やし、便秘解消や老化防止に役立つ作用を高めた新たな粉末が完成、同十二月に特許出願した。

 農作物の機能性に着目した新事業が県内で相次いでいる。熊本大と連携し、免疫力を高めるというキノコの一種、鹿角霊芝(ろっかくれいし)の栽培・生産を進める企業や、ノリを使って血圧を下げる機能性食品の開発に取り組む企業も出ている。

 「県内は農作物が豊富で微生物などの研究者も多い。大学と連携した複数のベンチャー企業がここ一、二年で誕生している」と高森勉・くまもとテクノ産業財団プロジェクトマネジャー(57)。県産業技術センターでは、栄養分析検査や売り込み先の紹介依頼が多くなり、前年度から企業からの相談項目に「食品の機能性」を設けたほどだ。

■脱サラでの挑戦

 M2ウィンもそのベンチャー企業の一つ。石橋一則社長(50)は熊本ファミリー銀行に二十七年間勤めた元銀行マンで、支店長時代に「食を扱うバイオ企業が熊本には必要」と一念発起。バイオ関連の製造会社に三年間勤めて昨年、独立した。見た目はイモのようで、食べるとシャキシャキした食感のヤーコンに魅せられ、農作物発酵の権威である大庭研究室を訪ねたのが始まりだ。

 大庭教授は「学生に実践的体験をさせられる」と商品化協力を快諾。紫イモを発酵させて高血圧を予防する発酵酒の成功手法をもとに、紫イモとヤーコンを混ぜる奇抜アイデアを産み出した。

 菊池産ヤーコンの二〇〇七年度の生産計画は百二十トン。うちM2ウィンが五十トンを購入する予定だ。菊池産ヤーコンを販売するきくち観光物産館の坂田幸一店長(59)は「大口の予約が入り、農家は安心して生産できる」と歓迎する。

■独自技術で大手と

 日本牛乳野菜(同)は、サッポロ飲料(東京都渋谷区)やハウス食品(東大阪市)とそれぞれ食品や飲料品をOEM(相手先ブランドによる生産)供給する契約を結んだ。評価されたのは、農産物を微細に砕き高栄養の飲料を作る独自技術。サッポロ飲料には一月から第一工場(熊本市流通団地)で生産を始め、ケールやゴマなど栄養価の高い素材を混ぜた野菜ジュースを出荷している。

 同社も一九九一年設立の若い会社だが、谷口健二社長(61)は「大手メーカーはよく見ている」と話し、健康産業のすそ野が広がり食を生かす高い技術が求められている今を読み解いている。

 目まぐるしく変わる市場が新技術の投入にもスピード感を求めている中、M2ウィンも近く健康食品会社などとの具体的商談に入る計画。「ほかの素材でも機能性食品に挑戦したい」と石橋社長。既に次の一手も描こうとしている。(伊豆信太郎)

熊本日日新聞2007年6月13日朝刊

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