狙いは「オフィス忘年会」 新型コロナ、知恵絞る飲食店

熊本日日新聞 | 2020年11月30日 13:30

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新型コロナウイルス対策として対面を避け、横並びでの食事を勧めている居酒屋。忘年会の予約は今のところ低調な店が少なくない=熊本市中央区

 もう師走。熊本県内も本格的な忘年会シーズンに入るが、今年は新型コロナウイルス感染症への懸念から取りやめる企業が増えるとみられる。開く場合も参加人数を絞ることが予想され、飲食店には厳しい冬となりそうだ。

 信用調査会社、東京商工リサーチが全国約1万社に11月実施したアンケートによると、忘年会や新年会を「開催しない予定」と回答した企業が87・8%を占めた。熊本県の割合はこれを1・5ポイント上回り、同社は「調査後も全国的に感染が拡大しており、開催を見送る傾向はさらに強まっているだろう」とみる。

 企業から商品の受注業務などを受託しているトランスコスモス(東京)の熊本市中央区の事業所は夏の感染「第2波」以降、従業員約750人に対し、従業員同士の会食を控えるよう呼び掛けている。責任者は「例年、10~15人程度のチームごとに近くの店に繰り出していたが、今年は感染防止が優先。仕方がない」と話す。

 約250人が勤務する損害保険ジャパン熊本支店も、支店内の忘年会開催は原則認めていない。鬼木幹生支店長(57)は「経済を回すことは重要だが、万が一、忘年会で感染したら顧客や飲食店に迷惑がかかってしまう」。春の新人歓迎会も開けなかったといい、悩ましげだ。

 一方、「例年は部署を横断して開いている職場も、少人数に分割するケースが出てくるだろう」と肥後銀行。現時点で会食を控えるよう求めてはおらず、開くかどうかは各部署に委ねているという。県庁や熊本市役所も同様で、開く場合は感染防止策の徹底を求めている。

 書き入れ時を前に、熊本市中心部の飲食店からはため息も。「磯丸水産」新市街店は、通常ならば既に多くの予約が入っている時期だが、「10人を超えるような大人数の予約はほぼゼロ」と言う。

 「排煙設備が整い換気が良い焼き肉店で」との見方もあるが、「彩炉」などを運営する雄和(同市)は「『Go To イート』効果もあって全体的に客は増えているものの、大人数の宴会を控える動きから忘新年会の予約は低調」と話す。

 ただ、店に足を運ばず、オフィスなどで忘年会を開く動きがあるとみる飲食店も。

 仕出し店「濱半」(同市)は職場での忘年会用オードブルの販売を開始。熊本ホテルキャッスル(同市)は例年、家庭向けに販売しているオードブル商品を忘年会向けとしてPRしている。

 磯丸水産を運営するジョー・スマイル(同市)も持ち帰りオードブルを12月から販売予定で、需要の取り込みに躍起。コロナ禍で例年と異なる師走の風景が広がりそうだ。(福山聡一郎、丸山伸太郎)