審査員評

●上位作には普遍性 荻野克彦氏
 自分のイメージが先行しすぎて、使い手を意識していない作品が目についた。そんな中、上位作は作り手の意図がくみ取れる普遍性があった。熊日賞は機能と楽しさ、用と美が両立した作品。和洋問わないし車との相性もいい。熊本市賞は技術の高い仕事。県伝統工芸協会賞は、桐の箱に象眼という組み合わせで軽さと柔らかさがでた。わたしの奨励賞は藍(あい)のグラデーションがシンプルで説得力があった。作り手が元気なら使い手も楽しくなる。両者の出会いの場に工芸展がなればいい。
●技術力高い県賞 小川哲男氏
 陶芸作品のレベルは年々向上しているが、今回は総じてインパクトに欠けていた。実用性を重んじつつも、「欲しい」と思わせる何かが必要。考えてほしい点だ。熊本県賞の「白磁組鉢2」は、シンプルな中にも下部を四角く造形するなどデザインを工夫している。薄手に仕上げていて、若い作家だが技術は高い。奨励賞に選んだ「スリップウエア組皿」は小代焼作家の作品だが、化粧土を使うなど新たな技法を試みている。伝統工芸からこうした作品が出てくるのはうれしいことだ。
●大胆な個性の表現を 富山弘基氏
 染織は個性を感じる作品が少なかった。「用と美」のバランスを考え過ぎ、大胆な個性の表現ができなかったのかもしれない。その中で、県伝統工芸館賞の「夢花ピロケース」は明るい彩りで楽しい作品に仕上がった。六枚一組の枕カバーで、その日の気分で取り替えることができる。若い女性を意識した感性が新しい。奨励賞に選んだ「ベッドカバー」は、心を和らげる効果がある藍(あい)を使って使用目的に配慮している。縁の加工など入念に作り込まれ、完成度も申し分ない。
●創意工夫に期待 宮崎珠太郎氏
 全体的に新味に乏しかった。伝統的技術を組み合わせて、新しい暮らしの楽しみを生み出す元気を示してほしい。熊日賞はコンセプトのしっかりとした力作。使い手の立場に立とうとする作者の思いにあふれ、挑戦する姿勢、良い意味での執念を感じた。私が奨励賞に選んだ「長物かご」は、基本的な編み方だが、手前と奥の模様の重なりが美しく面白さがある。耳かきや携帯用はしなど、使う場面を想定し、実用性と楽しさを兼ね備えた創意工夫あふれる作品を今後も期待したい。
 
熊本日日新聞 2007年10月29日朝刊掲載

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