審査講評

プラスアルファを グラフィックデザイナー 松永真氏

 デザインにはニュース性がないと思われがちだが、今回の入賞作は時代と向き合う姿勢が見えてうれしかった。全体の水準も非常に高く、デザイン界に明るい展望を感じさせる審査だった。

 グランプリは、北朝鮮のミサイル問題というタイムリーなテーマを的確に表現した。見る人を振り返らせるインパクトを持ち、デザイン的にもしっかりしている。作者は昨年のグランプリ受賞者と聞いたが、さすがだ。

 課題ポスター部門1席は、デザインが本来持つ美しさを引き出した華やかさのある作品。所々にまとめて描かれたビー玉が、人々が集う芸術文化祭というテーマをうまく表現している。

 自由題ポスター部門1席はインパクトが抜群。ただ、画面の新聞記事の部分は遠くから分からないし、手りゅう弾などのシルエットは近づくと気づきにくい。ビジュアル表現の鍛錬が必要だ。

 ビジュアルアート部門1席は、ドローイングの画面から、ふつふつとした力が伝わってくる。表現力も優れていて素質のある作者だと思うが、強いメッセージが感じられない点が惜しかった。

 総じて粒ぞろいの出品作だったが、欲を言えば何かプラスアルファが欲しい。熊本には優秀な先輩デザイナーが多いが、そこから一歩抜け出そうと努力すべきだ。緊張感を持って制作に当たってほしいと思う。(談)
 
もっと冒険、実験 グラフィックデザイナー 松永壮氏

 上位作品からは、作者の思いや作品の強さがガンガン押し寄せてきた。グランプリ作品には、とても強いパワーとメッセージ性がある。自分で作った物を燃やして写真に撮り、仕上げるなどアナログな手作り感もあり、独自性を出している。

 ポスター課題部門の1席は洗練された作品。曲線、色、透明感が美しく、温かく優しい気持ちになれる。自由部門の1席は非常にうまい。新聞記事を使ったコラージュをよく見ると、手りゅう弾や銃が浮かび上がる。見る者をハッとさせ、それでいて薄い水色が心地よい。ただ、あと一歩踏み込めれば。手りゅう弾などもすぐには分かりづらかった。ビジュアルアート部門1席はドローイング。描く技術だけでなく汚し方、消し方もうまい。コンピューター全盛時代に、手描きの良さを持つ作品を、もっと見てみたい。

 上位作のレベルは高いが、最初の総覧では全体に元気がないと感じた。枠を超え、はみ出すような強さ、ヘンテコさ、ヘタだけれど引かれる、といった部分を持つ作品が少ない。もっと冒険、実験してもいいのでは。(談)

熊本日日新聞 2008年6月5日朝刊掲載

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