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命を救え…苦悩の判断 熊本市、運用面の課題何度も協議
緊急連載 いのちの受け皿 始動「こうのとりのゆりかご」(上)
 「救われる命がある」「赤ちゃんの遺棄を増やすのでは」。小さな命をめぐって論議を巻き起こした「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」が、熊本市に全国で初めて開設される。実際の運用や影響がどうなるか…。関係者の手探りの対応や残された課題などを報告する。

◇   ◇

記者会見で「こうのとりのゆりかご」の許可理由などを説明する幸山政史市長(左)。慈恵病院などと協議を続けてきた健康福祉局幹部も、緊張した面持ちで臨んだ=5日午後3時10分ごろ、熊本市役所(植山茂)
 「本日付で医療法上の許可を行いました」。五日午後三時、熊本市庁舎十四階で始まった記者会見。「こうのとりのゆりかご」設置について、幸山政史市長が切り出した。七十人もの報道陣を前に言葉を選び、「許可するが、できる限り使われない努力をする」「難しい判断だった」と苦悩をにじませた。

●「想定外は困る」

 「現行法が想定していない。役所にとって一番困るケースだ」

 昨年十一月十日午後四時、市役所会議室。慈恵病院(同市島崎)の「ゆりかご」構想を受け、招集された市関係六課の課長らは頭を抱えた。海外の設置例を知る職員はいても、「国内初が熊本になることは想定外」(市幹部)だった。

 十二月十五日の許可申請を挟み、庁内連絡会議を続けた結果、「法令上の問題をクリアしていれば不許可の理由はない」との方向に傾く。幸山市長も「ゆりかごで救われる命がある」との考えを示した。

 二月二十二日、自ら厚生労働省を訪ねた市長に国は「現行法に違反しているとはいえない」と回答。市内部にも「許可の見通しがついた」との声が漏れたが、結局、市の許可は年度をまたいだ。

●「首相発言に発奮」

 「国がお墨付きを与えるのはふさわしくない」。安倍晋三首相が発言し、柳沢伯夫厚労相ら閣僚や厚労省幹部からも慎重発言が相次いだことが大きい。厚労省は「念には念を入れたい」として市が求めていた見解の文書化も突っぱねた。

 「現実に捨てられる命がある中、国のトップらは打開策を示さず感想だけを語る」。三月上旬、ある市幹部はそう歯がみした。

 この間の幸山市長の心中を周辺はこう解説する。「首相らの発言に逆に発奮した。なにより(文書化要求などで)市が判断を国任せにした、と受けとられたことに納得がいかなかった」

 許可に向けた市の作業が本格化した。三月下旬以降、市健康福祉局は病院、県などと運用面の課題について何度も協議した。年度内の許可を目指したが、幸山市長がこだわったのは「万全の船出」だった。

 「新生児が置かれたことを知らせるセンサーは大丈夫か」「病院から関係機関への通報体制は」「望まない妊娠をした女性を対象にした相談体制の拡充は」…。石橋を何度もたたくように、問題になると思われる点の洗い出し、行政としての対応策の検討を繰り返した。

 「ゆりかごで問題が発生した場合、病院だけでなく熊本市の問題になった」と市幹部。「これからがスタート」。許可の会見で幸山市長は気を引き締めた。(渡辺直樹)

(熊本日日新聞2007年4月6日付朝刊)

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