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| <妊娠かっとう相談> 受話器の向こうに“二つの命” |
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案内板に導かれて建物の奧へ。緑と季節の花に彩られた通路をたどると、取っ手の付いた小さな扉にたどり着く。事情があり育てられない新生児の命と未来を、親が託す場所。
「その姿形がまるでポストみたいで。設置者の温かい心遣いが感じられて、胸が熱くなった」。NPO法人円ブリオ基金センター(東京都千代田区)理事の田口朝子さんはドイツ視察の印象を振り返る。
新生児受け入れボックスは最初、ドイツに設置された。国内に八十カ所以上あり、「赤ちゃん箱」「赤ちゃんの揺りかご」などと呼ばれる。同センターは二〇〇六(平成十八)年四月、ドイツの取り組みを紹介するビデオを制作。タイトルを「赤ちゃんポスト」と付けた。設置を計画している熊本市の慈恵病院は「こうのとりのゆりかご」と呼ぶ。
同センターは〇二年から、産むかどうか悩む人の電話相談や、出産費用の給付、無利子貸付などの支援を展開している。これまで寄せられた相談は千件以上。同基金の支援を受け誕生した赤ちゃんは百三十六人(県内八人)に上る。
県内でも、同センターと連携する県いのちの懇談会と慈恵病院が〇二年、期間限定の二十四時間電話相談「妊娠かっとうヘルプライン」を開設。今年は八日間に二十二件が寄せられた。
「妊娠したが、相手には妻子がある。中絶してと言われるけれど…」。飲み込んだ言葉に「産みたい」という心情をにじませる女性。だれにも妊娠を明かせず、中絶可能な時期を過ぎた学生。ある女性は一度も受診せず臨月を迎え、相談から三日後に出産した。
「経済的に困窮していて、産着やおむつを届けに走った。電話がなければどうなっていたか」。同懇談会の西山玲子事務局長は、受話器の向こうの“二つの命”がいつも気掛かりだ。
県は〇三年五月、全国に先駆けて「妊娠かっとう」に焦点を当てた相談窓口を設置した。保健師や助産師が、平日午前九時から午後十時まで電話を受け付け、必要に応じて弁護士や産婦人科医の専門相談につなぐ。
相談件数は初年度の六百八件から〇五年度千三百六件に増加。しかし、妊娠や避妊に関する相談の割合は初年度こそ百七件(17・5%)だったが、以降は2―6%台とわずかだ。
「赤ちゃんポストより相談・支援体制の整備が先」。こうした声に、支援を続けながらも円ブリオ基金センターの田口さんは反論する。
「いま現実に、危険な場所に放置されて命を落とす赤ちゃんがいる。行き場をなくした母親と子どもの受け皿が、社会に存在することが大事だ」
■読者の意見
「赤ちゃんポストという呼び方がどうしても受け入れがたい。命を軽くしている印象がある」(阿蘇市、看護師・女、31歳)
「預ける前にいろんな支援の手が数多くあることを母親に知らせてほしい。一時的な気の迷いじゃないのか、問い掛けてほしい」(熊本市、育児サークル代表・女、39歳)
(熊本日日新聞2006年12月13日付朝刊) |
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