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<置き去り…名前すら授けず> 生と死隣り合わせ
揺れるいのち 赤ちゃんポストのメッセージ(2)
 一九八九(平成元)年五月の晴れた日。菊池郡大津町の白川土手で、生まれたばかりの女の赤ちゃんが見つかった。

18年前、赤ちゃんが置き去りにされていた白川堤防=大津町外牧
 日暮れ時、土手の大きな石の陰に隠れるようにして、砂地の上にへその緒が付いたまま裸で寝かされていた。あおむけの状態で両手を胸元にしっかりとくっつけて、目をキョロキョロさせていたという。体重三二三六グラム、身長五〇センチあった。

 散歩中に発見した国武一男さん(93)=同町外牧=は「あんまりきれいな赤ちゃんだったので、最初はべんた(人形)さんかと思った。人間の子どもと分かり、慌てて警察に通報しました」。

 当時、現場は護岸工事の最中。近くにはプレハブの建物があり、置き去りにされていた場所まで血痕が続いていたという。「おそらく建物の中で産んだんでしょう。人通りが少なく、発見が遅れていたら危ないところでした」と国武さん。

 女児は産婦人科で手当てを受けた後、熊本市の乳児院に保護された。「とても活発な子でした」と施設長。三歳の時、子どものいない夫婦に引き取られた。

 新生児が置き去りにされた場合、通報を受けた警察は、病院で新生児の健康を確認。発見場所の市町村長と児童相談所に連絡する。首長は名前を付けて戸籍をつくる。原則二歳まで乳児院で育てられ、その後児童養護施設に移ったり、里親の手で育てられる。

 熊本市の慈恵病院が計画している赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)に預けられた新生児も、置き去りのケースと同じ手順を踏む。

 県中央児童相談所によると、県内で置き去りにされたケースは、八九年度から現在までの約十八年間で十七件を数える。

 最近では今年一月七日、山鹿市鹿北町の道の駅の屋外女子トイレで、生後一週間から十日ほどの女児が見つかった。肌着と綿入れを着て、その上に白いタオルケットでくるまれていた。真冬の屋外。置き去りは、まさに死と隣り合わせだ。

 昔は子どもの名前を書いた紙や手紙が一緒に置かれていたことが多かったが、平成に入ってからは、そうしたケースは一件もないという。

 「出産や母親の健康状態などの情報は、その後の赤ちゃんの成育に大事。しかし置き去りは情報がほとんどない。とても気を使います」とある乳児院に勤めるベテラン看護師は打ち明ける。

 置き去りで、県警は、保護責任者遺棄の疑いで九七年以降、三人の母親を検挙した。

 一方、生まれてすぐ命を奪われる赤ちゃんもいる。県警の調べでは九七年以降、県内で一歳未満のえい児殺人は六件。トイレに産み落とされたり、口をふさがれて窒息死したりしていた。

読者の意見

 「トイレに流される、人目につかない場所に置き去りにされる…。そんな赤ちゃんの現状を考えると、一刻も早く救済システムが必要だと思う」(上益城郡益城町、フリーター・女、22歳)

 「どうしても育てられない場合は、施設に預ける方法もある。その手続きを避け、子どもを捨ててしまうような親から生まれた命を守る最終手段が、赤ちゃんポストだと思う」(熊本市、エステティシャン・女、40歳)

(熊本日日新聞2006年12月12日付朝刊)

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