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[解説] 「救える命」優先
熊本市島崎の慈恵病院が申請していた「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」について同市は五日、設置許可という判断を下した。親が育てられない新生児を保護するという国内初の施設に対し、判断の決め手となったのは、現行法上、不許可とする理由がなかった点だ。現実に捨てられる命が存在するという社会事情も後押しした。設置許可は命を救うことを優先した重い判断だと言える。
会見で熊本市から渡された「病院開設許可事項変更許可証」を手にする蓮田太二理事長=5日午後5時40分ごろ、熊本市島崎の慈恵病院(植山茂)
ただ、「捨て子を助長する」という懸念は消えておらず、政府関係者は倫理面での不快感を示しており、法整備に向けた動きもない。運用面に不安を抱えたままのスタートとなる。
「ゆりかご」が突き付けた問題は、望まない妊娠に苦しむ女性への支援体制が、立ち遅れているという現状だ。
同日の会見で、幸山政史市長は、市が独自に二十四時間の相談体制を整備すると公表した。しかし、だれにも知られることを望まず、新生児を捨てるしかないという切迫した状態の親に、どの程度の助言や支援ができるかどうかは未知数だ。
今後の最大の課題となる運用面でも、重い病気の赤ちゃんや超低体重児が置かれた場合などの救急医療との連携、保護責任者遺棄罪を問えるケースもあるとする警察の捜査、預ける親の匿名性の確保など、現時点では見えない部分が多い。
設置の許可にあたり、幸山市長や慈恵病院は「設置されても、利用がないことが望ましい」と繰り返した。同様の施設が既にある欧州では、匿名出産などの整備が進み、設置されているものの一件も利用がないところもあるという。
今回の設置許可で、同様の施設が全国に広がる可能性がある。「ゆりかご」の設置を機に国をはじめ行政には、命をめぐる社会環境を再度問い直し、早急に法整備を含め体制を見直す必要がある。(田端美華)
(熊本日日新聞2007年4月6日付朝刊)
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