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揺れる匿名性 病院「最後の救済手段」 県警「捜査は必要」
 熊本市島崎の慈恵病院が計画している「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」は、設置許可に向け同市の調整が大詰めを迎えている。「ゆりかご」は、母親が名乗らずに新生児を預けることができるという「匿名性」が最大の特徴。一方、県警は新生児が預けられた場合、「捜査は必要」としており、匿名で預けた母親の身元を警察が突き止める可能性もある。設置されれば国内初となる「ゆりかご」は、匿名性と捜査の必要性という相反する課題を抱えている。

「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」について協議した県市関係課連絡会議の内容を報告する熊本市健康福祉局幹部=27日、熊本市総合女性センター
 慈恵病院が二十日、熊本市に提出した見解書などでは、安倍晋三首相らの一部批判を受け、匿名性について「極力排除する」とした。その上で、「ゆりかご」の中に母親に相談を促す手紙や看板を設置し、氏名を極力明らかにしてもらうよう働き掛けるとしている。

 一方で、同病院は「匿名で利用できることが最後の救済手段」として、「完全に匿名性を排除できない」と回答。匿名で預けられた場合は、関係機関に速やかに連絡する方針だ。

 だが、連絡先には警察も含まれており、県警は警察庁とも協議した上で、「ゆりかご」に赤ちゃんが預けられた場合は「捜査や調査の対象になる」との立場。「保護責任者遺棄罪など犯罪にあたるかどうかは、保護者の意思や事情、赤ちゃんを置いた時の状況、健康状態などケースバイケースで、法と証拠に照らし個別の事案ごとに判断する」(刑事企画課)としている。

 「ゆりかご」をめぐっては、設置に向け関連法令に改正の動きはない。県警は現行法に基づき、駅のロッカーなどに放置された新生児と同じように、新生児の身元や健康状態、目撃者などを捜査や調査する方針。現行法上、「ゆりかご」だけ”特別扱い”する根拠はない。「ゆりかご」が設置されれば、新生児を預けた母親が保護責任者遺棄罪にあたるケースも想定される。

 熊本市が二十七日に開いた県市関係課連絡会議には、市が参加を呼び掛けた県警は欠席した。医療法上の施設変更届は「県警の関与する事案ではない」というのが理由。だが、関係者からは「現場の保存の必要性など実際に起きた時にどう対応すればいいのか、県警の意見を聞きたかった」との声も漏れる。

 県内の産婦人科医の一部は設置後の運用の在り方を「よく見えない」とした上で、「『ゆりかご』の利用者が捜査の対象となれば、匿名性と矛盾することになりはしないか」と指摘。課題はまだ残されている。 (田端美華、横山千尋)

 (熊本日日新聞2007年3月28日付朝刊)

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