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熊本市、国と連携困難に 許可向けシナリオ修正
 熊本市の慈恵病院が設置を目指している「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」が揺れている。設置に関する厚労省の見解を文書で出すことについて、七日に安倍晋三首相が「国がお墨付きを与えることはふさわしくない」と発言したことに続き、厚労省の辻哲夫事務次官も八日、否定的な考えを重ねて強調した。全国初のケースだけに、熊本市は許可に向けて国との連携を図りたかったが、そのシナリオは修正を余儀なくされた。

 「なぜ(熊本市は)文書にこだわるのか」

 八日午後二時過ぎ、東京・霞が関の厚労省。定例会見に臨んだ辻次官が気色ばむ一幕もあった。「法律的に認めないという合理的理由はない」との認識をこれまでの会見で明確にしてきたと強調。設置の許可権限を持つ熊本市に「自己判断」を強く促した。

 「厚労省は淡々と文書の準備をしていると思っていたのに…」。文書回答に関する厚労省の事実上の最終通告に、熊本市健康福祉局の幹部らは発言内容の確認に追われた。

 市は昨年十二月に慈恵病院から設置申請が出たのを受け、二月二十二日に幸山政史市長が自ら上京。厚労省に(1)「ゆりかご」に新生児を預けることが、児童虐待に当たらないか(2)妊娠の届け出義務違反ではないか、など六項目について文書での回答を求めた。

 この場で幸山市長は、厚労省の担当者から「違法とは言えない」との見解を得て、文書回答についても「時間はかかるが、いただける、との返事をもらった」という。加えて「ゆりかご」設置で、新生児の遺棄が増えないようにするなど運用面について、「国と市と一緒の土俵で考えていくという、共通認識ができたと受け止めた」(市幹部)。

 それだけに市幹部らは、二月二十三日に安倍首相がゆりかご設置に「大変抵抗を感じる」と発言して以来、「潮目が変わったのでは」と顔を曇らせた。

 一方、慈恵病院の蓮田太二理事長は八日、「(国は)もっと現場の事情を知ってほしい」と困惑の表情を見せた。

 同病院によると、設置計画発表後、妊娠したことを親にも言えず悩んでいる女性からの相談などが相次ぎ、病院のサポートで既に五人の赤ちゃんが無事出産にこぎつけた。「救われた命だ」と強調する蓮田理事長は「国から文書をもらわなくても市として判断してほしい」と市に決断を求める。

 幸山市長は八日夕、市役所で「設置判断において国にげたを預けたつもりはそもそもない。ただ、法制度に位置付けられておらず、(新生児の遺棄などは)全国的な問題なので、国から文書をいただき、丁寧に進めたかった」と強調。「救われる命があるとの考えは一貫している」とも述べ、設置許可に向けて病院などと協議を続ける姿勢に変わりはないことをにじませた。(こうのとりのゆりかご問題取材班)

 (熊本日日新聞2007年3月9日付朝刊)

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