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「赤ちゃんポスト」に首相反対 横やりに厚労省困惑
 親が育てられない新生児を預かる「赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)」は「美しい国」にふさわしくない? 熊本市の慈恵病院が進めているポスト設置を厚生労働省が事実上容認したことに対し二十三日、安倍政権から反対論が噴出した。捨て子の助長か、命の救済か。思わぬ政権の反対に厚労省は困惑、病院側は「名前でなく中身を理解してもらいたい」と決意に揺らぎはない。

22日の厚労省担当者との協議後、記者の質問に答える幸山政史・熊本市長(左)=東京・霞が関
 「子捨ての勧めになりかねない。日本はいつからそんな国になったのか」。二十三日、構想を知った政府高官は吐き捨てるように言った。

 厚労省は二十二日、上京した幸山政史熊本市長に「ポスト設置自体は現行法に違反しているとは言えない」として、今回のケースに限って容認する考えを伝え、実現の可能性は一気に高まった。

 しかし「子供は国の宝。家族の素晴らしさや価値を再認識することも必要」(一月の施政方針演説)と考える安倍首相は二十三日、強く反対。塩崎恭久官房長官も「美しい国づくりを目指す安倍内閣からしても」と強調した上で「親が子を捨てる問題について、法律以前の問題として考えなければいけない」とした。

 「積極的にOKしたとか、いいことだとは言っていない。法令違反を理由に設置を止めることはできない、という意味だ」。横やりを受けた厚労省幹部はそう釈明する。

 そもそも、赤ちゃんポストは、現行法が想定しない“法のすき間”に当たる設備。慈恵病院は民間病院で、行政に設置の是非を判断する権限はない。唯一、設置のための施設改造工事について、医療法に基づく許可申請を受けた熊本市が「止めようと思えば止められる立場」(厚労省幹部)に置かれる形になった。

 同省内には、ポスト設置に否定的な意見も少なくなかったという。しかし関係法令に違反する点は見つからず、最終的には「救える命がある」という点を重視。「それがなければ、逆の結論になっていた可能性もあった」と、ある幹部は打ち明ける。

 「一番大事なのは赤ちゃんを預ける前に、まず相談してもらうこと」。慈恵病院の蓮田太二理事長はポスト「こうのとりのゆりかご」を設置する目的をそう説明する。

 同病院が視察したドイツでは、年間約四十人が病院や保育所に設置されたポストに預けられている。ドイツでも最初は「子捨てを助長する」と反対の声が上がったが、ポストができたからといって捨て子が増えたということはないという。

 国内では一九八六年に群馬県内の社会福祉施設に赤ちゃんを置く小屋が設置され、約六年間で十人前後の命を救った。その後、赤ちゃんが凍死する事件があり閉鎖されたが、五人は成人し自立している。

 慈恵病院の構想が明らかになった昨年十一月以降、同病院には北海道や神奈川県など各地の妊婦から相談が寄せられた。「全国にそういう女性がいる。ゆりかごがあることで、安心して相談できる、と感じた」。同病院のスタッフの一人はそう話した。

(熊本日日新聞2007年2月24日付朝刊)

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