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| 命の出発点(下) 大きい経済的負担 妊婦健診の補助充実を |
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一月上旬の夜、福田病院(熊本市新町)の河上祥一院長は、入院中の妊婦の家族に電話を掛けた。「緊急手術になるかもしれません。病院に来られますか」
夫は困惑しているようだった。「夜はバスがないので…。行けそうにありません」。河上院長は戸惑った。マイカーどころか、タクシー代もないのだろう。それ以上のことは、聞けなかった。
「その女性も“飛び込み”の一人。危険な状態だったのに入院まで健診を受けていなかった。最近は保険証を持っていない人も増えている。お金がある人と、ない人との格差が広がっている」
■2枚の受診票
妊婦健診の一部は無料で受けられる。産婦人科で診察を受けた後、住民票がある市町村に妊娠を届けると、母子健康手帳と一緒に妊婦健診の受診票がもらえる。一枚の受診票で一回の健診が無料になる。受診票の枚数は市町村によって違う。天草郡苓北町が五枚、玉名郡の和水町、南関町、玉東町が四枚。そのほかの市町村はわずか二枚だ。
母子保健法は妊婦健診の頻度について、妊娠二十三週までは四週間に一回、二十四〜三十五週は二週間に一回、三十六週以降は毎週受診するよう求めている。合計すると十四、五回が必要で、市町村からもらえる受診票だけでは、到底カバーできない。
しかも、妊婦健診は健康保険の対象外で、原則的に自己負担。一回の費用は五千円前後と高く、超音波検査などが加わると費用はさらに膨らむ。合計で十万円前後になるが、高額療養費の支給対象にもならないため、経済的な負担は大きい。
熊本大付属病院(熊本市本荘)の大場隆准教授(産婦人科学)は「最低でも補助を五回に増やせないだろうか。とても十分な数とは言えないが、ハイリスクの妊婦を把握することはできる。医師が注意を促したり、きちんとした医療への糸口になる」と話す。
■つかみにくい実態
健診を受けず、市町村に妊娠届を出していない妊婦は、行政にとって実態がつかみにくい。県健康づくり推進課は「受診を勧めたり、補助があることを伝えたいが、県や市町村の広報紙で紹介しても、どれだけ読んでくれるだろうか」と悩む。同課では妊娠検査薬を市販する薬局にチラシを置いたり、購入者に手渡してもらうなどの対策を検討中だ。
「飛び込み出産」の拡大に危機感を募らせる医療や行政関係者が増えている。熊本大医学部保健学科の坂梨京子准教授(母性・助産学)は「家計が苦しいからと、受診を遅らせているうちに自宅で出産した女性もいた。社会的な支援を充実させていかなければならない」と話した。(梅野智博)
●医師から勤務先へ 「連絡カード」使おう
働く妊婦が健診を受けやすくするため、国は事業主に「必要な時間の確保」を義務付けている。例えば、医師から「来週の水曜日に来てください」と言われたら、会社に通知すれば勤務時間中でも通院できる。
また、健診で異常が見つかった場合、会社に業務内容の変更や休みを申請しやすくするため、厚生労働省は「母性健康管理指導事項連絡カード」の使用を勧めている。
熊本労働局によると、県内すべての産婦人科に配布されており、同省のホームページからもプリントできる。「切迫早産のため自宅療養が必要」「妊娠高血圧症候群で勤務時間の短縮を」などの対応があらかじめ例示されており、医師の意向が会社に伝わりやすく工夫されている。
窓口負担は二千円前後だが、一般的に四、五千円かかる医師の診断書より安い。
同局は「法律や連絡カードのことを知らない人も多い。事業主には就業規則に妊婦の保護規定を盛り込むように指導している」と話している。
(熊本日日新聞2008年1月29日付朝刊)
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