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子宮脱手術後に膀胱脱に 診療科の枠超えた治療を
女性器周辺の障害
 子宮が膣(ちつ)側に下垂する子宮脱の手術後、同様に膀胱(ぼうこう)が下がる膀胱脱になり、長年悩んでいる女性たちがいる。医療現場では子宮脱と膀胱脱はセットで治療するのが一般的とされるが、子宮脱の手術にとどまるケースがあるからだ。診療科の“縦割り”が原因との指摘もあり、チーム医療の必要性を唱える医師もいる。

 「モグラたたき」

 子宮脱は子宮と骨盤をつなぐ靭帯(じんたい)が弱まったり傷つくことなどで発症する。膀胱脱や直腸脱も同様の原理で起こり、膣壁を通して器官や臓器が膣口から体外に脱出することもある。多産や重い物を持つ仕事をする人に起こりやすい。それらの疾患を合わせると、軽度も含め60歳以上で10人に1人が起こり、未産婦の発症も1―2%あるという統計もある。

 「手術後しばらくして膀胱が下がってきた。執刀した医師にどうにかしてくれるように頼んだが、子宮脱は治ったからと取り合ってくれなかった」。熊本市内に住む60歳代のAさんは目を潤ませながら訴える。

 Aさんは2年前、同市内の産婦人科で子宮脱と診断され摘出手術を受けた。それまで膀胱脱の症状はなかったという。結局、別の病院の泌尿器科にかかったが、再手術に踏み切れずに現在も膀胱脱は続いている。「膀胱脱の手術も一緒にしてくれていれば、こんなことにならなかったのに…」

 福田病院(熊本市新町)の河上祥一医師は「子宮脱だけ治そうとしてもモグラたたきゲームのように後になって膀胱脱や直腸脱になる可能性が高い」と説明する。そのため子宮脱の摘出手術の際には、膀胱や直腸と骨盤をつなぐ靭帯を縫い縮める手術を同時に行うのが一般的という。しかし、膀胱脱などが起きていないため行わない医療機関もあるようだ。

 「再発しやすい」

 その背景を河上医師は、「医療現場の“縦割り”の弊害の一つ」と指摘する。従来から子宮は産婦人科、膀胱は泌尿器科、直腸は外科の専門領域とされている。熊本泌尿器科病院(同市新町)の井秀隆副院長も「脱の起こる原理は同じなのに、一部を除いてチーム医療がなされていないのが現状」と説明する。

 アメリカなどでは女性の生殖器周辺を一緒に扱う専門の診療科が増えているという。「膀胱脱は命にはかかわらないこともあり、日本では泌尿器科が積極的に治療に関与してこなかった歴史がある。ただ誰にでも起こる可能性はあり、潜在的な患者は少なくない」と井副院長。

  膀胱脱は子宮脱などと合わせ、高齢化とともに症状を訴える女性が増えてきた。尿道より下部に膀胱の一部があるために尿が出にくくなったり、尿失禁の原因にもなる。重症の場合は腎臓疾患を引き起こすこともある。

  泌尿器科で専門的に行われる膀胱脱の手術には、膀胱を引き上げるように膀胱と下腹部の皮下2カ所をナイロンの糸でV字型につなぐ方法がある。ただ、「もともと靭帯が弱っているため再発しやすい」と井副院長。閉経後に性交渉を行わない前提で膣口を閉鎖する手術法もあるという。

  河上医師は「子宮脱も膀胱脱も特効薬的な予防法はなく、今のところ手術が最善の治療法。各診療科が連携しながら治療することがまず大切ではないか」と話している。 (岡本幸浩)

 (熊本日日新聞2005年6月22日付朝刊くらし面)

 
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