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厳格な要件 提供「望めない」雰囲気に
くまもと腎移植最前線<中>
「腎臓一つ七十万円。移植でドナー(臓器提供者)の家族も私もみんな幸せになった。倫理的に問題があるとは思っていない」
熊本赤十字病院での腎臓移植手術(同病院撮影)
八代市内の会社員男性(39)は移植された腎臓の位置を握りこぶしで示し、そう言い切った。
子どものころから慢性腎不全を患い、二十八歳で透析治療を開始。臓器移植法が施行される一週間前の一九九七(平成九)年十月と、二〇〇二年五月、それぞれフィリピンで、亡くなる直前の別々のドナーから二度、腎臓提供を受けた。
「日本では移植医療は期待できない。腎臓病の苦しみを知らない官僚が法律をつくっているから、何も進まない」と、男性は日本の移植医療を批判する。
心停止や脳死後の腎臓提供が少ない中、愛媛県宇和島市の臓器売買事件のように、健康な体から臓器を摘出する生体腎移植は臓器売買の温床となる危険性をはらんでいる。
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倫理指針
そのため、生体腎移植には日本移植学会の倫理指針などで高いハードルが課されている。
同指針では生体腎移植のドナーを六親等内の親族か三親等内の姻族と限定。親族に当たらない場合は、病院の倫理委員会の承認が必要とし、報酬のやりとりの有無やドナーの任意性などを審査している。
しかし、このような厳格な審査がかえって「献腎も生体腎も望めない」という雰囲気をつくり上げているのも事実だ。八代市の男性の場合、透析治療も合わず移植するしか道はなかったが、親族の腎臓は適合せず、献腎は当時、「(確率的には)百五十年待たなければならなかった」という。
ただ、臓器売買を禁じた臓器移植法は国外犯規定があり、国外での売買にも適用される。にもかかわらず、実際は中国などでの移植手術をあっせんする業者が横行し、日本人の海外での臓器売買が問題視されているとの指摘もある。
熊本大の浅井篤教授(44)=生命倫理学=は「正当なルールで提供してもらうことができなければ、『医療の手段がない』と、あきらめるべきだ。ただ一方で、国は臓器の供給を増やすための方策を講じなければならない」と指摘する。
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「変な法律」
施行から九年目を迎えた臓器移植法は与党が二つの改正案を提出。現行法は、臓器提供に際し本人と家族の同意を必要とし、ドナーは民法で遺言ができる十五歳以上としている。改正案は、家族の同意のみで提供できるという案と、ドナーを十二歳以上に引き下げる案で、ともに継続審議となっている。
十一日、熊本市であった臓器移植普及推進月間の記念講演。講師で世界保健機関(WHO)移植課日本代表の篠崎尚史氏は、世界の移植医療と比較した上で、ドナー本人の署名がないと臓器提供ができない現行法を「変な法律」と痛烈に批判した。
(熊本日日新聞2006年10月16日付朝刊)
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