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 インキュベーション     きょうの発言 西村真理子さん(6)
 私の勤める熊本赤十字病院の近くに熊本県インキュベーション施設「夢挑戦プラザ21」がある。若い起業家などに場所を提供し、支援もしてくれるそうだ。インキュベーションというと、大学の生化学研究室での細胞の培養や酵素反応のための定温放置などを思い出すが、辞書を引くと抱卵、ふ化、保育、潜伏(期間)などの意味がある。

 大学入学後の学部長挨拶だったと思うが、「薬剤師になるのに多額の税金を使うのだから心して励むように」と言われ、はっとした。3歳で父親を亡くしてから二人の弟の姉として、母親や周りに面倒をかけないようにと思っていた。何でも1人でやってきたつもりだったし、学費の安い国立大学にストレートで合格なんて親孝行と自画自賛していた。それは間違いだった。奨学金や周りの温かい支援でインキュベートされてこその私であった。

 そう思ってから社会の役に立ちたいと考えているが、まだインキュベートされている側かもしれない。

 さて、研究室ではくしゃみをするたびに現教授のS先生が「こらぁ、インキュベートしよるのにくしゃみばするとは誰かぁ!」と怒鳴り込んできていた。だ液には多くの酵素が含まれるので反応中の試験管に混じったら実験が無駄になるのだ。インキュベーションも心地よいものばかりとは限らない。時には怒鳴られることも、つらくあたられることもあるが、その人の心の底にある温かさや育てようという気持ちから発せられたものは、時が経つとともに懐かしく思い出されるから不思議だ。

 子供たちと先日、映画「皇帝ペンギン」を見に行ったが、あの厳しい自然の中で彼らの抱卵、子育てはすさまじい苦労がある。でも時期がくればちゃんと子離れする。感動した。(県臓器移植コーディネーター)

 (熊本日日新聞2005年8月10日付夕刊「きょうの発言」)
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