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過疎地での模索 地域を支え、支えられ
ルポ地域医療第1部 医師が足りない(7)
山都町の緑川へき地診療所で診察する、町立蘇陽病院の水本誠一院長。地域を支え、地域に支えられる医療を目指す
 緑川の水源、緑仙峡近く。南には九州脊梁(せきりょう)の深い緑が連なる。道路わきにぽつんと立つ上益城郡山都町の緑川へき地診療所。五集落六十一世帯、百四十二人の健康を支える。

 「どうですか。体の調子は」

 診察する町立蘇陽病院の水本誠一院長(53)。病院は県指定のへき地医療拠点病院。診療所は週一回月曜午後開き、常勤医四人が交代で、看護師らと出向く。ほかにも二診療所がある。

 診察は毎回五、六人。軽自動車でやってくるお年寄り夫婦もいれば、病院の車が細い山道を送迎することもある。

 「野菜のできは?」。会話も弾む。一般診察の後、薬を出す程度だが、健康状態の把握に定期的な診察は欠かせない。
     

 県内には十七カ所のへき地診療所と二カ所の歯科診療所があるが、常勤医がいるのは十カ所。他は週に一〜三回の非常勤医の診察だ。医師を派遣するのが拠点病院で、蘇陽病院と球磨郡多良木町の公立多良木病院、上天草市の上天草総合病院が担う。

 医師派遣の調整は多良木病院内のへき地医療支援機構が行うが、拠点病院も医師不足で派遣医のやり繰りも難しくなっているのが実態だ。

 医師不足―。

 OECDデータでは、人口千人当たりの医師数は平均三・〇人に対し、日本は二・〇人で三十カ国中二十七番目。医療技術の進展と高齢化で、GDPに占める医療費割合も高くなるが、平均9%に対し、日本は二十二番目の8%と低い。

 「お金と人が足りない中、医師は二十四時間、高度の医療提供に努力した。しかも、医療に完全はないにもかかわらず、常に100%が期待される。このギャップに医師は疲れ果て現場を離れ始めた」。「医療崩壊」の著者、小松秀樹医師(東京・虎の門病院泌尿器科部長)は「困難な状況は今後も進む」と言う。
     

 水本院長は三月まで熊本市内の民間病院に勤務した。医師を志したころ、公害問題や過疎地医療に関心を抱き、調査に参加したことも。蘇陽病院での診療経験もあり、四月に院長に就任した。

 地域医療の未来。「教師の経験の厚みをへき地勤務が支えるように、医師にも地方を回るローテーションがあっていい」とも言うが、とりあえず目標は「地域とともに」。

 「ここではひざや腰が悪いお年寄りも、何らかの仕事をしている。せざるを得ない現実がある。医療技術も大事だが、画一的な診断、治療だけでなく、そうした暮らしを知り、アドバイスできる医師に育ってほしい」

 病院は住民の健康を支える一方で、町では雇用の場、病院給食は地元野菜の消費の場。町あっての病院、病院あっての町でもある。

 町内唯一の救急病院だが、限界もあり、熊本市の高度医療機関との連携は不可欠。過疎・高齢化が進む中、医療と保健、介護の継ぎ目ないサービスも課題だ。

 「身の丈に合った、地域を支え、支えられる病院に」。模索が続く。(松岡茂)=第一部おわり

 (熊本日日新聞2008年6月5日付朝刊)
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