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県境を越え 進む連携…現場は限界も
ルポ地域医療第1部 医師が足りない(5)
水俣市立総合医療センターが開いた「地域医療連携懇話会」。県境を越えた連携の下地作りでもある=水俣市
 五月三十日夜。水俣市の市立総合医療センター(坂本不出夫院長)が開いた「地域医療連携懇話会」。水俣・芦北地域にとどまらず、近隣の鹿児島県出水市、阿久根市、大口市からも、医師や看護師ら約百七十人が集まった。

 スクリーンで、医療センターの各診療科と担当医師が順に紹介されていく。「一人で入院患者を何人診てるの」「先生の所に空きベッドはありますか」。円卓テーブルを囲んだ懇親会では、参加者が日ごろの情報を交換した。

 医師不足を背景に、懇話会を始めたのは二〇〇六年。医療センターの常勤医は〇五年に五十三人いたが、今は四十三人。坂本院長(58)は「地域医療を守るには、県境を越えた連携しかない。懇話会はその下地作り。病院や医師間の結びつきを深めるのが狙いだった」と振り返る。


 昨年四月には、救急医療での連携が実現した。医療センターの常勤麻酔科医が一年間不在になったのが引き金。土日や夜間に緊急手術が必要な患者が運び込まれた際、常勤医が二人いる出水総合医療センター(出水市)から麻酔科医の派遣が可能となった。

 八代市まで搬送すれば車で一時間かかるが、出水から医師が来れば約二十分で、対応までの時間が短縮できる。この四月までの緊急手術は交通事故や脳出血など十二件に上った。緊急の帝王切開で母子を救ったケースも二件ある。

 しかし、出水側の医師不足も深刻だ。大学の医師引き揚げで〇六年に呼吸器科を閉鎖、今年一月には産科、四月には代謝内分泌科がそれぞれ休診になった。「肺炎や糖尿病などの急患や専門的な治療は、水俣(医療センター)を頼らざるを得ない」と瀬戸弘院長(51)。苦境は、阿久根市の医師会がつくる市民病院も同じだ。

 現場だけでの連携には限界も見えつつある。入院・外来患者の二割を鹿児島県側から受け入れている水俣の医療センターは、医師一人で約四十人の入院患者を抱える診療科も。ぎりぎりの医師数で、連携先から患者を受け入れる“余力”がない場面も増えた。


 県は新しい「第五次県保健医療計画」に、「県外も含めた連携が必要」と盛り込んだ。「水俣の意欲的な取り組みは他の県境地域に参考になる。県としても早急に隣県と協議の場を持ちたい」と県医療政策総室。

 しかし、両県の、あるいは大学同士の、地域医療に関した話し合いは進んでいない。

 水俣、出水、阿久根の三つの中核病院は昨年十月から、より効果的な連携を目指して定期的な院長会議を開いている。坂本院長は「一つの自治体病院ですべてが完結する時代ではない。県境をまたいだ救急搬送のルール作りや病院ごとに得意な診療科を集約して役割分担など、行政や大学も参加した協議の場を設ける必要がある」と話す。(渡辺哲也)

 (熊本日日新聞2008年6月3日付朝刊)
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