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専門医不在 救急搬送半数が管外へ
ルポ地域医療第1部 医師が足りない(4)
阿蘇中央病院(阿蘇市)に急患を搬送する救急車。脳疾患の場合は、専門医がいないため管外の病院に運ぶケースが少なくない
 三月中旬。阿蘇市の朝はまだ冷え込みが厳しい。七時すぎ、自宅で新聞を読んでいた男性(83)の異変に、家族が気付いた。朝食を呼び掛けても返事がない。生気が失せたような顔だ。

 近くに住む消防職員は元救急隊員。連絡するとすぐに救急車を手配してくれた。

 軽い脳梗塞(こうそく)が疑われたが、市内に専門医はいなかった。近くの主治医の意見も聞いた上で、熊本市の熊本赤十字病院に運ばれた。後遺症を防ぐのに有効とされる「発症三時間」が迫る中、午前十時前に血管から細い管を入れ、脳の血栓を薬で溶かす処置が施された。

 男性は十日間入院した後、リハビリのために転院した。「左手に軽いしびれが残った程度。言葉もその日のうちに普通の状態に戻った。専門医に診てもらい助かった」と家族。

     

 阿蘇郡市のほぼ中心に位置し、阿蘇市が運営する阿蘇中央病院。外来棟は築四十年以上と老朽化しているが、阿蘇郡市の中核病院の一つだ。

 しかし、多くの自治体病院と同じく、医師不足などを背景に経営は厳しい。熊本大医学部教授を委員長に経営改革委員会を組織。委員会は昨年三月、改革案を答申した。

 その柱が二次救急医療体制、脳血管・心疾患治療体制の整備だ。

 阿蘇地方の救急搬送患者を病気別に分けると、脳血管疾患と心疾患が上位に連ね、両方で28%を占める。高齢化が背景にある。しかし、同病院には常勤の専門医はおらず、大半が熊本市などの三次救急医療機関に直接搬送されている。

 「手術まではできなくとも、専門医がいれば重症患者への専門的な緊急対応が可能。逆に、遠距離搬送が不要な軽症患者の見極めもできる」と湯本信也院長。熊本市内の三次救急機関の負担軽減にもなる。

 阿蘇から熊本市まで往復すると三時間。「救急車は搬送に活動の大半を費やし、いざという時救急車が足りず、重症者への対応ができない事態にもなりかねない」。消防本部も懸念する。

 しかし脳神経外科、循環器科の専門医の確保は実現していない。

     

 現在の医師は常勤六人に非常勤が二人。時間外の急患は医師一人と看護師一人の当直で対応している。看護師らが消防本部と救急症例検討会を開くなどしているが、体制は十分とはいえない。

 このため、急患全体の統計でも、熊本市などへ直接搬送されるケースが増加。昨年の管内の救急搬送患者は二千五百九十五人だが、その半数近くが直接熊本市などへ搬送された。中には軽症患者も多い。

 「医師不足の時代だからこそ、各機関の役割分担が大切」と湯本院長。救急隊も効率的に活動できる。阿蘇地域の、各医療機関の連携も課題という。(三賀山雄三)

 (熊本日日新聞2008年6月2日付朝刊)
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