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産科 リスク回避へ集約化進む
ルポ地域医療第1部 医師が足りない(3)
診察する天草中央総合病院の荒木真佐子医師。「お産を取り扱うのは大変だが、素晴らしいこと」と話す=天草市
 「近くにお産できる病院がないのは、やはり不安。何かあったらどうしようという気持ちでいっぱいでした」

 天草市牛深町に住む女性(35)は四月、第二子の女児を出産、分娩した病院は車で一時間かかる旧本渡市内の病院だった。自宅近くの牛深市民病院は、産科は外来しかないためだ。

 天草市で出産を扱うのは民間病院一つと、同市東町の健康保険天草中央総合病院だ。

 同病院産婦人科には医師三人が勤務、年間四百例ほどを扱う。以前は同病院に二人、牛深市民病院に一人の医師がいて、牛深でもお産ができた。しかし〇七年四月、産婦人科医師の減少が進むなか、医師を派遣していた熊本大学が体制の充実を図り集約化。牛深市民の医師は天草中央に移り、牛深は週二回の外来診療だけとなった。

 お産は二十四時間、いつ始まるか分からない。「安全」と思われているが、急変する恐れもある。天草中央総合病院の産婦人科部長で、週一回牛深の外来も担当する荒木真佐子医師は「一人体制は母体にとっても危険。医師も肉体的、精神的にもたない。集約化は全国的な流れ」と言う。

 きっかけの一つが、福島県立大野病院で〇四年十二月、帝王切開手術を受けた女性が大量出血で死亡し、執刀医が業務上過失致死と医師法(異状死の届出義務)違反で逮捕、起訴された「大野病院事件」だ。

 「術前の見極めや治療は極めて難しい症例」とされ、医学会は「最善を尽くして逮捕されては、医師は難しい症例を避けるようになる。医療は崩壊に向かう」と強く反発している。

 当時、大野病院は産科医は一人で、年間二百件の分娩を扱っていた。日本産科婦人科学会は、医師の勤務改善などのため「ハイリスク妊娠・分娩を扱う公的な病院は三人以上の常勤が原則」と緊急提言した。

 熊本大学も県などと体制を協議。天草市と阿蘇地方で集約化を決めた。現在、県内の公的病院の産科医は、原則として複数体制となっている。

 集約化はマイナス面が取りざたされがちだが、「複数の医師がいることで充実した医療を提供できるし、より安全な出産ができる」と荒木医師。

 荒木医師らは、集約化した〇七年四月から同十二月までに、牛深地区から天草中央に入院・出産した三十六人にアンケート。連携体制には三十四人が理解を示し、出産を終えての感想では半数以上の二十三人が「心配もなく、良かった」、残り十三人も「心配はあったが良かった」と答えた。医師の労働環境も改善されたという。

 一方で、「牛深でもお産ができるように」という人も二十八人。阿蘇地方の調査でも、医療の利便性を希望した意見が多かった。

 荒木医師も「これまで一時間の距離が問題となったケースはないが、起こる可能性はある」。

 受診しやすい環境、質の高い医療をどう両立させていくか。しかし、産科医は、過重労働、高い訴訟リスクなどを背景に、今後も減少傾向が続くと見られている。(萩原亮平)

 (熊本日日新聞2008年6月1日付朝刊)
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