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卒後臨床研修 医師偏在が生んだ負の連鎖
 厚生労働省が2004年4月に義務化した、大学卒業後の臨床研修(卒後研修)を終えた1期生が4月、各自の進路を選択した。既に指摘されていた通り、医師の大学病院離れが数字のうえからも一層鮮明になった。

 全国医学部長・病院長会議が4月と5月、卒後研修終了者の大学帰学状況を調べた。その結果、義務化2年前の02年3月末卒業生と比べ、国立大で平均26・9%、公立大で同22・6%、私立大で同12・1%それぞれ減っていた。減少率は全国平均で20・9%。8ブロック別では、高い方から四国43・8%、北海道43・3%、中国37・1%、東北31・0%。減少率は地方圏は高く、大都市圏は低い。九州は15・3%。

 ところが熊本県すなわち熊本大医学部付属病院に限ると、4月1日現在、1期生の医局への入局者(後期臨床研修生)は67人。02年4月の卒後研修生の入局者は100人だったので、33人も下回った。熊本大病院を卒後研修病院に選んだ1期生は86人、このうち医師国家試験の合格者は70人だった。医局入局者は、熊本大病院以外の病院での卒後研修生もいるが、国家試験の合格者数とほぼ等しい。

 さらに昨年4月の卒後研修生の入局者は82人、国家試験合格者は68人、今年4月の卒後研修生の入局者は52人、国家試験合格者44人で、医師確保は年々深刻になっている。もちろん後期研修生が大量に入局すれば、十分な医師は確保できるが、それが不可能なら大学病院の診療体制は先細り。大学病院は医師を手放さないようになり、大学病院の派遣医師に支えられた地域医療は崩壊する。いわば医師偏在が生んだ負の連鎖に陥るわけだ。

 また診療科別に02年3月末卒業生との比較で、全国の卒後研修生の増減状況を分析すると、診療科目15科のうち大学帰学者が増えたのは形成外科、皮膚科、麻酔科、耳鼻科の4科目。残りは脳神経外科の42・3%減をはじめ、外科、小児科、整形外科、産婦人科、救急が20%近く減った。診療リスクの高い科目や24時間勤務体制の科目、深夜勤務の多い科目を目指す医師が確実に少なくなっている。この診療科目に偏りのある医師の供給が、医局はもとより地域医療に暗い影を落とし始めている。

 熊本県では4月、八代市で八代総合病院の小児科と整形外科が、同市の熊本労災病院に統合された。天草市でも天草中央総合病院の整形外科医2人のうち1人が熊本大病院の医局に引き揚げ、小児科医2人も1人は3月末に退職、1人は天草地域医療センターに移り休診状態が続いている。

 医師の研修制度は1948年にインターン制度として創設された。医師免許国家試験の受験資格を得るため、大学卒業後に1年以上の診療と公衆衛生の実地訓練を義務付けた。それが68年、医師免許取得後2年以上の臨床研修を任意の努力規定にした。そして今回義務化に戻したが、大学は「研究や教育ができなくなる」として厚労省に見直しを求めている。国は均質な医療提供も考え、診療科別の医師数の定員設定など、国民ニーズと合致させるような工夫がほしい。

 (熊本日日新聞2006年5月30日付朝刊・社説)
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