



|
| レンタルベッド 軽度者に認めず |
 |
 |
 |
4月の介護保険制度改正に伴い、要支援1・2と要介護1の認定を受けた軽度者の福祉用具レンタルに制限が加えられた。中でも影響が大きいのがベッド。安易な利用が指摘される一方で、ベッドが自立生活を可能にしているケースもあり、一律の切り捨てに不満の声が上がっている。
 |
| 県内の福祉用具卸業者の倉庫。4月以降、連日レンタルベッドが返却され、棚に収まらず通路に積まれている |
軽度者へのレンタルが認められなくなったのは車いすとその付属品、特殊寝台(ベッド)とその付属品、床擦れ防止用具、体位変換器、認知症老人徘徊(はいかい)感知器、移動用リフトの8品目。「使用が想定しにくい」という理由だ。
経過措置として9月までは利用できるが、10月以降はそれぞれ一定の要件に該当しなければ介護保険での利用はできない。ベッドの場合、起き上がりか寝返りが「できない」ことが要件だが、該当者は少ないとみられる。
◆寝たきりに
「家族全員が働いていて、昼間は父一人。ベッドがあるから家の中を自由に動けるけど、布団になったら寝たきりになるんじゃないか」。要介護1の男性(87)=熊本市=と同居する長男の嫁(53)は心配する。
男性は脳梗塞(こうそく)の後遺症で手足に少しまひが残り、緑内障のため視野が極端に狭い。このため3年ほど前からベッドを利用。立ち上がりを助けるだけでなく、ベッドを伝って歩くことでトイレや台所への移動も可能にしている。
担当するケアマネジャー(52)は「ベッドがあるから自立できているのに、布団になったら起き上がるのが面倒で横になる時間が増え、筋力が衰える。介護度を悪化させて再びベッドを借りろと言うのか」と疑問を投げかける。
◆料金値下げも
制度改正の背景には、福祉用具の安易な利用が高齢者の身体機能の低下を招いたという反省がある。さらには給付費の伸び。県内では介護保険制度が始まった2000年度の3億1900万円から、05年度には26億円に増加。訪問通所サービス全体の給付額が2倍になったのに対し、福祉用具貸与は8倍に膨らんだ。
「利益優先の事業所があることは否定できないが、一部を取り上げて全体を締め付けるのはおかしい」と福祉用具貸与事業所ミタカ(上益城郡嘉島町)の三井喬代表。ベッド利用者の約4割は軽度者。県内では数千人に影響が出るとみられ、「ベッドで生活が成り立っている人からベッドを引きはがすのは暴挙だ」と話す。
改正を受け、料金を介護保険の1割負担に近い額まで引き下げて貸し出したり、中古品を安く販売する事業所も出ている。アメックス熊本(熊本市)の中川義明社長は「今はしのげても長くは続かない」と問題視する。
同事業所は「貸与ベッドの引き揚げには粛々と応じる」方針。ただ、ケアマネジャーには「ケアプランに自信があれば、制度が変わったからすぐに引き揚げることにはならないはず。行政に必要性を訴えるぐらいのことはしてほしい」と注文をつける。
◆独自の対応策
そんな中、独自の対応策を考える市町村もある。埼玉県和光市は介護予防プログラムの一環として、ケア会議でベッドの必要性が認められた人には8万円を上限に購入費用を助成。「軽度者にも必要な人はいる。国の制度のサイドメニューを考えるのが市町村の役目」と同市長寿あんしん課。
静岡県浜松市は早々に、軽度者でも必要に応じて利用を認める方針を示していたが、「県からダメだと言われた。一般財源を充てることは難しい」として白紙に戻している。
県高齢者支援総室は「県内では独自の対応策を取る市町村は今のところない」。福祉関係者からは国に要件緩和を期待する声もあるが、厚生労働省振興課は「軽度者の場合、ベッドはほかの福祉用具で対応できる。要件緩和は考えていない」としている。(田川里美)
(熊本日日新聞2006年5月16日付朝刊) |
|
 |
 |
 |
|
|