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後期高齢者医療の行方 3カ月待たず軌道修正
後期高齢者医療制度廃止法案を参院に提出する野党4党の代表者。与党側は制度の手直しを急いでいる
原則、七十五歳以上の高齢者を対象にした後期高齢者医療制度の扱いが、会期末を迎える通常国会最大の焦点になった。野党側が参院で同医療制度廃止法案を提出したのに対し、政府・与党は低所得者の保険料軽減など見直し案づくりを急ぐ。
制度を厚労省と“二人三脚”で設計した中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関、中医協)からは「政争の具になっている」「制度全体の評価がない」といった不満の声も聞こえ、独立保険の行方は晴れない。
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公費割合を固定
福田政権誕生後、初の国政選挙になった三月の衆院山口2区補選。故岸信介元首相や故佐藤栄作元首相の出身地を抱える選挙区で自民党が勝つ戦いになるはずだった。ところが、比例区からくら替えした民主党前職が自民新人を抑え当選した。
「山口2区補選の結果から、国民が本当に怒っているのは、お年寄りいじめ、『うば捨て山』の後期高齢者制度と確信した」。民主党の鳩山由紀夫幹事長は、山口2区補選に勝った勢いが、与野党逆転の参院で野党四党を制度廃止法案提出に踏み切らせた主因になったことを示唆する。
破れた与党側も事態を深刻に受け止めた。福田康夫首相、舛添要一厚労相らが相次ぎ制度見直しに言及。厚労省は低所得者の保険料減免や年金天引き開始時期の延長といった見直し案を検討中。四月一日の制度導入から三カ月待たず軌道修正を迫られている。原因は何か。
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一からのスタート
一つは、七十五歳以上の人達を既存の保険制度から、強制的に独立させたこと。加入者一千三百万人は保険料を公的年金から一斉に天引きされる。保険財政の収入は公費割合を50%で固定し、残り50%のうち40%は他の保険制度の支援金、10%は加入者の保険料。支援金と保険料の負担比率を二年ごとに改定する。
ただ高齢者集団の医療費が急速に膨張するのは、日の目を見るより明らか。厚労省は後期高齢者の二〇一五年度の保険料を〇八年度比約40%増と試算した。〇八年度の年間保険料約六万一千円が約八万五千円になる。現役世代の負担が重くなりすぎないよう配慮した。試算値が明らかになり、この独立保険が世代間対立を招き易い構造になっていることがあらためて分かった。
しかも保険の経営主体は各都道府県の後期高齢者医療広域連合という特別地方公共団体。市町村の寄り集まりで医療保険の運営経験もなく、高齢者との“折衝”に放り出された。
「息子の健康保険に入っていたが、年金から突然、保険料を引かれた」「年寄りだから病気が増えるのは当たり前。病院通いを減らして痛い目に遭えというのか」。各広域連合の窓口は苦情や照会で混乱、職員は対応に追われる。
「市町村の国保財政も厳しかったが、一般会計からの繰入金や積立金などを使って、何とかやりくりできた。しかし後期高齢者医療保険は財政基盤のない一からのスタート。しかも完全独立している。やりくりしようにもできない」。九州の複数県の広域連合職員は台所事情を明かす。
通常国会の会期末を前に、与党は「制度の根幹は維持」、野党は「制度廃止」と真っ向から対立。その一方で公的年金も含めた社会保障体系を視野に入れ、自民党税制調査会の津島雄二会長ら「インナー」と呼ばれる税制通の議員四人が消費税増税を協議している。(南里秀之)
(熊本日日新聞2008年6月4日付夕刊メディカル)
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