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メディエーター 中立的立場で事故調停
 医療メディエーター。まだ聞き慣れない職業だが、医療事故など医療者側と患者の間で起こったトラブルを対話で解決する仲介者として活躍の場が増えている。

 医療事故の際、医療メディエーターは中立的立場で医療側と患者双方の話を聴きながら、訴訟を回避して解決に導く調停者(メディエーション)になる。医療過誤訴訟が頻発する米国では一世紀ほど前から存在するという。

 3月に協会設立

 そんなプロの調停者を養成する「日本医療メディエーター協会」が三月七日設立され、二十日、早稲田大で設立記念のシンポジウムを開いた。理事長に自治医科大の高久史麿学長が就任。協会設立に奔走し、専務理事に就いた和田仁孝・早稲田大法科大学院教授は「メディエーターが各地で普及する一方で、質を保証するシステムが求められている」と指摘。「中立性や独立性など医療メディエーターの質を担保し、メディエーター自身の専門技法を向上していく必要がある」と、協会設立の意義を強調した。

 社団法人全国社会保険協会連合会(東京都港区)の調べでは、既に約八百人の医療メディエーターが全国の病院で働いているという。メディエーターの養成を最初に手掛けたのは財団法人日本医療機能評価機構(東京都千代田区)。〇五年に一回目の講座を開いた。同機構の養成プログラムは千人以上が受講し、〇八年度も四百五十人が参加する。

 医療メディエーター協会は、養成プログラムを認証し、プログラム受講者を医療メディエーターとして認定、“お墨付き”を与える。協会は、養成実績のある日本医療機能評価機構と早稲田総研インターナショナル社(東京都新宿区)を、最初の認証養成機関に指定した。

 認証機関の養成プログラム受講者は、協会に申請すると、医療メディエーターに認定される。ただ医療機関で勤務していることが認定の条件になる。

 医療過誤危機

 最高裁の調べでは、医事関係訴訟事件は、新規受理件数に限っても一九九七年の五百九十七件が、ピークの〇四年には千百十件に急増。〇五年以降減少に転じ、〇六年は九百十三件。医療事故の処理が“米国化”している。この流れと軌を一にして、医師がリスクの高い治療や処置を避ける「保身医療」が増加。そのことが患者の医師不信を招き、“負の悪循環”に陥っている。

 訴訟は、訴える患者側の負担も重い。医療過誤の立証が必要なので、裁判は二〜三年と長期化し、肉体的、精神的な苦痛が続く。費用もかかる。訴訟社会の米国では、医療機関は損害賠償支払いに備えて保険に入る。訴訟の続発で保険料が高騰し、払えない医療機関が廃業する医療過誤危機と呼ばれる事態すら起こる。医療過誤保険の保険料は間接的に患者の医療費に跳ね返り、医療へのアクセスを妨げる。

 明らかな医療ミスや医療側の不誠実な対応など、患者側からすると訴訟しか対抗手段がないケースもある。半面、訴訟の限界もある。当事者が攻撃と防御を繰り返しながら対決するため、医療側の「誠実な対応」は得られにくい。

 厚労省は、手術ミスなどで患者が死亡した場合、事故調査に当たる「医療安全調査委員会」(仮称)の創設を検討、医師への刑事罰も考えている。裁判以外の方法で医療紛争を処理する「医療ADR(裁判外紛争処理)」は、そんな厚労省の姿勢をけん制する役割も担いそうだ。

 (熊本日日新聞2008年4月2日付夕刊メディカル)
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