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特定健診・特定保健指導(上) 有効性の議論深まらず
発症初期で皮膚表面
四月に始まる特定健診・特定保健指導を前に、メタボリックシンドロームへの注意を呼びかける検診施設が増えている。写真は日赤熊本健康管理センターが発行する情報誌
 厚労省が四月に導入する「特定健康診査(特定健診)・特定保健指導」。メタボリックシンドローム(メタボ、内臓脂肪症候群)をめぐる“腹囲論争”だけが突出し、生活習慣病対策として特定健診や保健指導がどの程度有効かの議論は深まっていない。

 肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病の四つを合併すると、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)などを起こし易く、『死の四重奏』と呼ばれ、以前から注意されていた。二〇〇五年四月、日本肥満学会や日本内科学会など八学会がメタボの概念と診断基準を発表。医療費削減を模索する厚労省が早速、特定健診・特定保健指導に採り入れた。

■国のお墨付き

 診断基準は男性85センチ以上、女性90センチ以上の腹囲(へそ周り)を前提に、血糖、脂質、血圧のうち二つ以上が基準値以上なら「メタボ」と診断される。「肥満はよくない」と注意されても、どの程度の状態から肥満なのかあいまいだった。

 それを国が「男85センチ、女90センチ」とお墨付きを与えた。分かり易さも手伝い、一気に腹囲だけが脚光を浴びた。半面、それが特定健診・特定保健指導の全体像を、じっくり考える機会を奪っているとの指摘は強い。

 基準値は、元阪大付属病院長の松澤佑治住友病院長ら阪大グループの研究成果がベース。これに対し、京大や東大の研究グループなどが異論を唱えた。さらに国際糖尿病連合が、日本人を含むアジア人の肥満症の腹囲を男性90センチ、女性85センチと発表。メタボの基準値と男女がひっくりかえり、混乱が広がった。

 松澤院長が理事長の日本肥満学会は「メタボは血圧や血糖、脂質と併せて判断する」として、現時点での見直しを拒否。一方、厚労省は東大の門脇孝教授を班長にする研究班をつくり、全国の住民を対象に追跡調査を始めた。〇九年中には最適な基準値を作成するという。事実上の診断基準見直しだ。

■ペナルティー

 その一方で四月からの特定健診・特定保健指導は、現行の診断基準で判定する。「積極的支援(メタボ)」または「動機づけ支援(メタボ予備群)」と判定されたら、医師や保健師などから特定保健指導の名目で食事や運動といった生活習慣の改善を促される。

 特定健診・保健指導は保険者に義務付け。健診や保健指導の実施率の高低で、保険者が国に拠出する後期高齢者医療制度(原則七十五歳以上)への拠出が10%以内で増減する。実施率が低いと拠出を増やすペナルティーを科す。

 この仕組みは「高齢者医療確保法」に基づき、国保や被用者保険の加入者で特定健診の実施年度中に四十歳〜七十四歳に達する人が対象。“腹囲絶対主義”で幅広い年齢層を判定する方法には、臨床現場から「高血圧や高脂血症のリスクファクターがあっても、やせた人は保健指導から外れる」「腹囲85センチ以上の中年男性でも、血糖や血圧、脂質が正常な人はいくらでもいる」といった批判が少なくない。

 さらに日本人死因のトップを独走する生活習慣病の「がん」予防をにらんだ内容が、特定健診から外れている。医師の間からは「政府が国民の健康を守ることより、いかにカネをかけないかに重点を置いた結果」(私立大付属病院関係者)と“酷評”する声も聞こえてくる。

(熊本日日新聞2008年2月20日付夕刊メディカル)
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