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産科医療補償制度 医師の過失の有無問わず
発症初期で皮膚表面
帝王切開で赤ちゃんを出産した産婦が止血手術中に死亡、執刀医が業務上過失致死容疑で逮捕、起訴された県立大野病院=福島県大熊町、2006年2月撮影
 医師に過失がなくても、出産の際に赤ちゃんに障害が残った場合、患者や家族に補償金を支払う「無過失補償制度」が二〇〇八年度中に創設される見通しになった。

 産科医不足の背景には、医療事故に関する紛争の増加があるため、医療従事者を裁判の“重圧”から解放し、産科医の増員につなげる狙いもある。

 県立大野病院事件

 〇四年十二月、福島県立大野病院(大熊町)で、帝王切開で赤ちゃんを出産した二十代の産婦が大量出血の止血中に亡くなった。執刀した産科医は〇六年二月、傷害致死罪と医師法(異状死体の届出義務)違反の容疑で逮捕され、三月に福島地裁に起訴された。

 出産後、産婦の胎盤が子宮に癒着する「胎盤癒着」という術前の見極めが非常に難しい治療をめぐって、産科医が選択した術法が、業務上過失致死罪に当たるという警察・検察庁の判断からだった。

 日本産婦人科学会などによると、胎盤癒着の際の選択肢は(1)胎盤を剥離(はくり)、除去させた後、子宮を摘出する(2)胎盤の剥離を中止し、子宮摘出に移行する―の二通りに大別されるという。産科医は前者の術法を選んだわけだ。

 この“刑事事件”は、「県立大野病院事件」と呼ばれ、産科医不足に拍車をかけ、医師がリスクを伴う治療を回避する傾向を強めた。「最善の手を尽くし、患者が亡くなったら犯罪者扱いでは、医師や看護師は浮かばれない」(小松秀樹・虎の門病院泌尿器科部長)。全国の医師ら医療従事者の間に、そんな考え方をまん延させる後押しになった。

 紛争の早期解決

 産科医療補償制度は、厚労省の研究班が〇二年度、検討を始めた。当時、医療事故による訴訟の多発が、医学部生を産科医から遠ざけていた。また〇二年前後は、警察が医療事故を取り締まるようになり、民事事件だった医療事故が刑事事件として扱われるケースが増えた。

 自民党や厚労省、日本医師会などが検討中の補償制度は、医師の過失の有無を問わず、分娩(ぶんべん)時の医療事故の被害者を救済し、紛争の早期解決と事故原因を分析するのが目的だ。財団法人日本医療機能評価機構が制度を運営し、厚労省が制度啓発などで後押しする。

 制度の加入者は医療機関や助産所。加入者が、日本医療機能評価機構を通じて保険会社に保険料を支払う。保険会社は専用の保険商品を開発するという。

 当面、補償対象は通常の妊娠・分娩にかかわらず、原因の特定が難しいとされる「脳性マヒ」に限定する案が有力だ。補償金は、通常分娩で赤ちゃんが脳性マヒになった場合、障害一級―二級で二千万円から三千万円が想定されているという。

 ただ制度に対する国や地方自治体の関与が、もう一つハッキリしない。まず肝心の補償金の財源。仮に保険料で賄えなくなった場合、国がどの程度負担するのか、地方自治体にも負担を求めるのか、など詰める課題も少なくない。

 この問題では日本弁護士連合会も、市民参加の第三者機関「医療被害防止・救済機構」(仮称)の創設を提案。補償の合理的な判定基準の設定、判定手続きの透明性の確保、判定プロセスを検証する仕組みづくりなどを訴えている。

(熊本日日新聞2008年1月9日付夕刊メディカル)
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