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「被用者保険」(上)現役世代の自立原則崩壊
発症初期で皮膚表面
被用者保険一元化は社会保障審議会医療保険部会が扱っている。同部会窓口の厚労省保険局総務課には「医療費削減策」を練る医療費適正化対策推進室も置かれている=中央合同庁舎5号館17階(亀井宏二)
 厚生労働省が、中小企業の従業員と家族が入る政府管掌健康保険(政管健保)への国庫補助を削減する方針を打ち出した。削減分は、大企業社員らの組合健保と公務員の公務員共済組合に肩代わりさせるという。

 「長年の懸案だった被用者保険一元化に向けた第一弾」。厚労省は言う。しかし一方で政府は「骨太の方針二〇〇六」に五年間で社会保障費一兆一千億円(単年度二千二百億円)の削減を明記。厚労省は、来年度予算に対する概算要求基準(シーリング)を達成する二千二百億円削減策として被用者保険一元化を持ち出したとの見方が消えない。全国の組合健保でつくる健保連などは「安易な負担転嫁は許せない」と反発している。

 「連帯の精神」

 八月末の概算要求締め切りを前にした二十七日。厚労省は、自民党厚生労働部会に対し、政管健保への国庫補助削減と組合健保と公務員共済による削減分の穴埋めを切り出した。寝耳に水の議員もおり、戸惑いと反発が広がった。その後、健保連の代表が厚労省を訪問し撤回を要求。保険料は会社側も負担するため、経済界の不満も渦巻いている。

 政管健保の〇六年度決算(医療分)によると、収入は六兆九千四百八十七億円、うち国庫補助は七千八百八十八億円(11・4%)。厚労省の計画では、政管健保への国庫補助のうち六十五歳未満の医療費給付分の半額(約二千二百億円)をカット。さらに組合健保に比べて割高な政管健保の保険料を引き下げる。この分は、金額に換算すると約七百億円という。

 この結果、二千九百億円の財政調整が必要になる。厚労省は組合健保に一千九百億円、共済組合に一千億円肩代わりさせて国費を削る考えだ。「給与所得者としてお互いに連帯の精神を持とう」(舛添要一厚労相)というわけだ。

 低所得、高保険料

 公的な医療保険制度は、これまで現役世代が高齢世代を支援し、現役世代は各保険者の自立が原則だった。健保、政管、共済が国民健康保険の高齢者医療費分を支援しても、健保が政管を助けることはなかった。それが、健保と共済で政管を支えることになれば、現役世代の保険者自立の原則が崩れる。

 九月二十日に開かれた社会保障審議会の医療保険部会。厚労省は、国民皆保険制度を堅持するため、保険者の努力(医療費削減)と保険者間のさらなる助け合いを訴えた。背景には「保険者間の相互扶助は国民健康保険に対しては進んでいるが、被用者保険間は高齢者以外の部分はほとんど手付かず」(保険局総務課)という認識がある。

 厚労省は被用者保険間の“格差実態”の資料も明らかにしている。被用者三保険(政管、健保、共済)の〇五年度の平均総報酬額(平均年収)は政管三百八十五万円(加入者平均年齢三七・三歳)、健保五百五十五万円(三四・二歳)、共済六百八十九万円(〇四年度、三四・七歳)。半面、保険料率は政管8・2%に対し、健保平均7・4%、共済平均6・9%。政管健保の加入者は、組合健保や公務員共済の加入者より低所得なのに、保険料率は高い。これは、被保険者(従業員)と事業主(会社)の保険料負担が、政管は折半、組合健保は会社規模にほぼ比例して事業主負担が大きくなり、その分、被用者の負担は小さくなる。

 しかも政管と健保の被保険者の報酬と保険料率の格差は、年々拡大している。報酬では格差ピーク時の五十歳前後で健保が一・六倍高く、高額報酬の大企業の組合健保では、被用者本人の保険料率の最低は22・1%にとどまる。

 (熊本日日新聞2007年11月7日付夕刊メディカル)
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