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次世代の最先端走る再生医療 患者の細胞生かす
 機能が損なわれた患者の臓器や組織を、患者自身の細胞を培養して修復する再生医療が進んでいる。患者本人の細胞を使うため、拒絶反応が起こりにくく、再生しやすい。県内でも、国立病院機構・熊本医療センター(熊本市)が特殊な動脈硬化症や難病などを治療している。今月、ヒト細胞を使った国内初の再生医療製品が承認されるなど、再生医療は次世代医療の最先端として広がりつつある。(高本文明)

 シャーレの中で薄い心臓の筋肉がピクピクと動く。心筋の元となる患者の細胞を培養した細胞シートだ。九月、東京であった日本医学ジャーナリスト協会の例会で、開発者の岡野光夫・東京女子医大教授(先端生命医科学研究所長)が映像を紹介した。角膜、歯などの再生や、食道がん手術に使う細胞シートも次々に取り上げた。

 細胞シートは、組織や臓器の元になる体性幹細胞を患者自身から取り、薄いシート状に培養して移植する技術で、世界的に注目されている。「張り付けるだけで済むなど、技術的な難しさも少なく、応用範囲が広い」と岡野教授。患者の口腔(こうくう)粘膜の細胞からつくった再生角膜の移植にも世界で初めて成功。多くの大学病院や医療機関で研究や治療が行われている。

 三十五年前に風邪薬の副作用で、スティーブンス・ジョンソン症候群にかかったある患者は、片方の目の視力をほとんど失い、苦しんできた。岡野教授と東北大眼科の西田幸二教授が共同研究した再生角膜の移植手術を受け、視力が改善。「手術を決心して良かった。感謝している」という。

 岡野教授は「再生医療は、臓器を丸ごと再生するといった印象を持たれやすいが、患者の細胞を生かして治す医療が現実に進んでいることを知ってほしい」と話す。

 負担少なく

 再生医療は二十一世紀に入り、急速に研究が進んだ。国立医薬品食品衛生研究所のまとめでは、ヒトの細胞や組織を使った臨床研究・治験は、これまでに全国で延べ三百カ所以上の医療機関が取り組んでいる。

 患者自身の細胞を使う場合は、患者以外の細胞に比べ、拒絶反応が起こりにくく、患者の体への負担も少ないのがメリット。現在、実際に患者に対して行われているのは、心臓移植しか方法がなかった重症の拡張型心筋症や、脳梗塞、脊髄(せきずい)損傷、骨の壊死(えし)、目(角膜)の障害など多岐にわたる。

 熊本医療センターは、足の血管が詰まり進行すると切断しなければならない閉塞(へいそく)性動脈硬化症や難病バージャー病などに対応。患者の骨髄をもとに血管を再生させる。高度な先端医療のうち、厚生労働省が認める「先進医療」の一つだ。九州中央病院(福岡市)などは、乳がんで一部失われた乳房を、患者の脂肪に含まれる特殊な細胞で再建する。

 こうした再生医療は、患者を使った研究の段階では、病院側が研究費として治療費を肩代わりする。先進医療の場合は、診察、検査、投薬、入院料など一般診療と共通する部分について、公的医療保険を使える。

 慢性的な臓器不足が続いている移植医療にとって再生医療の進展は福音だ。臓器移植法が施行され今月で丸十年たつが、脳死移植は六十二件にとどまる。県臓器移植コーディネーターの西村真理子さんは「角膜や皮膚など組織レベルの再生医療はかなり進んでおり、多くの患者を救えるのは間違いない。研究が進み、臓器の再生が将来できるようになれば、海外で見られる臓器売買の問題もなくなるのではないか」と期待する。

 医工連携を

 再生医療の関連製品も事業化の一歩を踏み出している。厚生労働省の薬事・食品衛生審議会が三日、バイオベンチャー企業「ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング」(J―TEC、愛知県蒲郡市)が開発した「自家培養表皮」の製造販売を承認した。国内初の再生医療製品で、重症のやけどの治療用だ。

 広報担当の榊原規生さんは「販売価格は未定だが、保険適用されるよう厚生労働省と相談している。多くの患者さんに使えるよう貢献したい」という。

 岡野教授は「医学と工学が連携し、医師のニーズに合わせ技術開発を進める必要がある。“神の手”でなくても、だれでも使える技術が普及すれば、より多くの患者を治せる」と話している。

発症初期で皮膚表面

発症初期で皮膚表面


(熊本日日新聞2007年10月21日付)
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