くまにち.コム  
3大生活習慣病やこころ、こどもの病気など、最新治療法や先端医療の現状をお伝えします。  
   
ホーム > 読むクスリ > その他一覧 >   
読むクスリ
メール健康相談
休日在宅医 お役立ちリンク
お知らせ
フリーワード検索

     
肥後医育塾
笑顔ヘルCキャンペーン
メディカルネット
 
デリすぱホームドクターガイド



救急救命士 心肺停止患者に強心剤、4月解禁
 一定の講習を受けた救急救命士による心肺停止患者への強心剤(エピネフリン)の投与が、4月1日から認められる。2004年の気管挿管に続く医療行為の解禁で、県内は本年度4人を養成。救命率向上には市民の応急手当てが欠かせないが、救急救命士によるプレホスピタルケア(病院前医療)は充実に向けてまた一歩前進する。

救急車内でエピネフリン投与の模擬訓練をする熊本市消防局の救急隊員。左が県内第1号で投与の資格を取得予定の中野正信救急救命士=熊本市消防局
  エピネフリン投与は、救急救命士が定められた手順に従い必要と判断した場合、医師の指示を受けた上で実施。あらかじめ確保しておいた静脈路から1回1ミリグラム投与する。自己心拍の再開を目指して3〜5分間隔で繰り返し、心臓マッサージと人工呼吸も施しながら医療機関に搬送する。対象者は医学的な理由から8歳以上に限られる。

  講習と実習必須

 投与の資格を得るには170時間の講習と50時間の病院実習が必須で、熊本県の場合、病院実習で実際の心肺停止患者に家族の同意を得て1回以上の投与が課せられる。県内は熊本市消防局などの救急救命士4人が第1号で取得予定だ。

 静脈路の確保はすべての救急救命士が現在、一定の条件下で行っており、エピネフリンの投与自体は難しい技術ではないという。県内第1号の1人となる同市消防局の中野正信救急救命士(37)は「人形での模擬訓練を重ね、病院実習では患者さんに戸惑いなく投与できた。現場でも医師の目や手となり速やかに処置できるように努めたい」と意気込む。

救急救命士が処置した心肺停止患者
1カ月生存率は7.0%(2004年)
 県内の2005年4月1日現在の救急隊員は1087人で、そのうち救急救命士は221人。1991年の救急救命士の導入で、県内でも心肺停止患者の救命率は上がっている。04年の実績は、一般隊員が処置した患者の1カ月生存率6.2%に対し、救急救命士は7.0%。

 ただし、心肺停止状態で医療機関に運ばれた約1430人の約6割は心肺停止からの経過時間が長く処置できないケースで、同生存率を全体でみると2.9%(合計42人)に落ちる。

 一方、救急隊の到着前に家族や市民によって応急手当てがされたのは44.1%(630人)で、その場合の同生存率は6.3%(40人)。されなかった場合の1.1%(9人)に比べて格段に高く、応急手当ての有無が生存率を左右している。
 厳しい状態で投与

  県防災消防課によると、病気や事故による県内の心肺停止患者は毎年1400〜1500人。1991年の救急救命士の誕生で救命できる人は増えているが、それでも1カ月後の生存率は全体の3%程度だ。そのような状況で国は確実な気道確保ができる気管挿管を医師以外に解禁。エピネフリン投与も認めることで、同課は「救命率が上がるのでは」と期待する。

 一方で、効果はすぐに現れないとの見方もある。理由の一つは投与できる救急救命士の養成に時間がかかる点。県内の各消防局や消防本部が派遣する救急救命士が講習や実習を受ける期間、救急隊は減員になるため一度に大量派遣できない。病院実習を受け入れる医療機関も限度があり、「少しずつしか増やせない」(同課)。

 さらに、エピネフリン投与の厳しい現実もある。一般的な投与対象は心停止からの経過時間が長く、心臓の動きがないか極めて弱い状態。熊本赤十字病院(熊本市長嶺南)の田代尊久救急副部長は「病院到着前の投与で蘇生(そせい)の可能性は高まるが、蘇生しても重い脳障害が残る場合が多い」と説明する。

 “命のリレー”大切

 人は心臓が止まると4分以内に脳に障害が起きるといわれる。対して119番通報後、救急車が現場到着するのに要する時間は県平均で7・2分(04年)。初期の心停止は心臓がふるえた状態で、このケースだと04年7月から一般市民も使えるようになった自動体外式除細動器(AED)が蘇生に威力を発揮している。

 現状で、救急救命士が実施できる医療行為は心肺停止の場合に限られる。そのため関係者には「患者の安全のため制限は必要だが、さらに救命率を上げるには心肺停止前の医療行為の拡大へ議論を深めるべきではないか」との意見もある。

 熊本市消防局救急課の金子忠明主査は「救命に大切なのは市民、救急隊、医療機関とつなぐ“命のリレー”。第一走者である市民による早急な応急手当てが重要。救急救命士に与えられた資格を有効に生かすためにも、市民に救急への意識を高めてもらいたい」と呼び掛けている。

 (熊本日日新聞2006年1月11日付朝刊くらし面)

 
  無断転載は禁じます。
掲載の記事、写真等の著作権は熊本日日新聞社または、各情報提供者にあります。
Copyright Kumamoto Nichinichi Shimbun
  (c) 熊本日日新聞社 〒860-8506 熊本市世安町172