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 七十二歳のムツコさんは最近、ひざが痛むため、買い物に出掛けたり、台所で立って料理したりすることが面倒になっている。一日三食は欠かさないが、以前に比べると食事の量は減り、「ご飯とみそ汁と漬物」など、簡単に済ますことが増えた。すると、病気になったわけでもないのに、体重が減ってきた。基本健診で「低栄養の疑いがある」と言われ、がく然とした―。
松尾 洋
高齢者の「低栄養」身近な問題
 
肉や卵などの摂取も必要
 低栄養とは食事の栄養状態が悪く、血液中のタンパク質である「血清アルブミン」が低い状態を言います。体重や筋肉が減少し、体力や抵抗力が低下。風邪を引きやすくなるなど、要介護状態につながる大きな要因となります。

 「低栄養」は決して、食糧難時代の話ではありません。地域で一見、健康的に過ごしている高齢者の約一割が「低栄養状態」と言われるほど、身近で大きな問題になっているのです。厚生労働省の研究では、入院患者や施設入所者、在宅療養者の三〜四割が低栄養状態と確認されています。

 「年を取ったら、肉はあまり食べない方がいい」と思っていませんか? 高齢になるとあっさりしたものを好むようになったり、コレステロールを気にするあまり、魚ばかりを食べるようになったりする人が多いようです。しかし、最近の研究では、肉や卵などの動物性タンパク質や、油脂類を多く摂取している高齢者の方が、老化の速度が遅く、寝たきりにもなりにくいということが分かってきました。

 低栄養を予防するのに必要な一日の摂取量は、肉六十〜七十グラム(薄切り肉二〜三切れ)、魚八十グラム(一切れ)、卵一個、牛乳コップ一杯以上、油を使った料理一品が目安です。肉と魚の摂取量は一対一。少食の人でも間食で牛乳やヨーグルトを補いましょう。ただし、糖尿病など生活習慣病で食事制限がある場合は、医師に相談してください。また、きちんと食事をしていても、同じ食品ばかりを摂取していては栄養が偏り、低栄養を招きます。少しずつさまざまな食品をとることが大切です。そして、食欲が低下したときは、おかゆと梅干しで済ますのではなく、おかずを先に食べ、ご飯は残すようにしましょう。食欲を増進するためには適度な運動も必要です。

 肥満や生活習慣病の増加から「食事を減らすこと」に注目が集まっていますが、高齢期の人は気付かないうちに低栄養に陥っていないか、今一度、食事の内容を見直してみましょう。(健康運動指導士、熊本市)



(熊本日日新聞2006年11月14日朝刊)
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