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イラスト・空知
 棒とひも持ち帰る認知症の夫
 69歳の夫は認知症。体は元気で、ちょっと目を離したすきに近所の畑に入り、作物を支えている棒とひもを持ち帰ってくるんです。なぜか毎回、棒とひもだけ。ほかの物には興味がないようです。何のために取ってくるのかがさっぱり分からず、夫に理由を聞いても返事はありません。今のところ畑の持ち主には理解いただいていますが、やめさせる方法はないでしょうか。(主婦・68歳、熊本市)
≪アドバイス≫

  ★
悩みは周囲にオープンに

  本人の立場で理由考えて
悩みは周囲にオープンに
(熊本市・介護老人保健施設南楓苑介護支援相談室長の飯川貞子さん)
 脳の機能が低下すると「もの忘れ」や「判断力の低下」が起こり、どんなに説得しても、しかっても効果はありません。周りがやめさせようとすればするほど、そのことにこだわってしまいます。

 幸い、畑の持ち主に理解と協力を得られているようですので、これ以上の問題行動がないのでしょう。棒とひもを持って帰り、何かされるのでしょうか。過去の体験で畑などに興味があり、何かしたいのかもしれません。畑について行って、一緒に行動してみたら何か分かるかもしれません。理由を尋ねても自分に不利なことは認めようとしません。本人が混乱し、自信を失うばかりです。

 介護は自分一人で抱え込まず、家族や地域の人たちにも知ってもらい、協力を得ることで自分にも優しい心が生まれます。「認知症」を家族だけで囲わないで、オープンにすることが大事。息抜きや借りる手は多いほど安心感と心強さを感じるはずです。

 熊本市では現在、保健福祉センターや地域包括支援センターが認知症の相談窓口として活動しています。私たち介護施設の職員も地域の民生委員や自治会、老人会などと協力して、認知症の理解が広がるよう努力しています。大いに活用してください。
本人の立場で理由考えて
(玉名市・グループホームゆうきの家ホーム長の原山幸子さん)
 周囲から見たらおかしな行動にも、本人の立場で考えると理由があるはずです。私たちはその行動を見ると瞬間的に動揺し、やめさせようと否定してしまいがちですが、いきなり否定するのでなく、理由を聞いてみましょう。例えば本人が「自分の物」と言われた場合は「ああそうだったの。ごめんなさいね」と一度は受け止めます。本人の気持ちが落ち着いたときに、本人が納得できることばで説明して、一緒に返しに行くのも一つの方法だと思います。

 認知症の方が物にこだわる場合、孤独感や不安を感じていることが多いようです。それを満たすために物を集めているのかもしれません。また、畑の中の支柱に気持ちが向くのは、一家の大黒柱としての役割を果たせないことの無念さがあるのかもしれません。家族もつらいでしょうが、本人もつらいのです。

 日ごろから本人が好きなことや、できることを見つけては「さすがお父さん」とか「助かった、ありがとう」などと声をかけましょう。そんな会話が生活の中で自然に出てくれば、本人も家族も気持ちが楽になると思います。

 家族や地域の人たちが本人の苦しみに気付き、夫として父としての役割が果たせるように支えていけば、認知症になっても安心して暮らせるのだと思います。
お悩み募集 
相談ごとを400字程度にまとめ住所氏名年齢職業電話番号を書いて
〒860−8506 熊日文化生活部まで。
ファクス096(361)3290 メール kurashi@kumanichi.co.jp
掲載は匿名も可能です。採用分には薄謝進呈。
(熊本日日新聞2006年6月27日付朝刊くらし面)
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