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後期高齢者医療制度 現状に合わず 地後井・県医師会副会長
◇ちごい・やすひろ 1964年熊本大医学部卒。76年熊本市渡鹿で開業。88年県医師会理事。2002年から同医師会副会長。福岡県出身。69歳。
 後期高齢者医療制度(長寿医療制度)が大きく揺れている。民主党など野党四党は廃止法案を提出、与党は保険料の負担軽減など見直し案をまとめた。背景には年金から強制的に保険料を天引きされる高齢者の反発や、新たに診療報酬に導入された「後期高齢者診療料」への現場医師らの不満がある。会員に新たな診療料に対する慎重な対応を呼びかけた県医師会の地後井泰弘副会長に聞いた。(田端美華)

 ―後期高齢者医療制度の創設にあたり、医師会はどうかかわったのですか。

 「この制度の理念は、一九九八(平成十)年に日本医師会(日医)が提唱したものだ。さまざまなデータを検証した結果、七十五歳以上の高齢者は、それ以下の年齢の人たちに比べ、有病率や受診率が極端に高いことが分かった。高齢者がそれぞれ加入している保険に将来にわたり加入し続けると、早晩、保険財政、特に市町村国保は破たんする。そこでほかの医療保険から独立した形の新制度を提唱した」

 ―現在の制度は、日医が提唱したものと同じなのですか。

 「日医では、『保障』という理念の下、財源について公費九割、後期高齢者の保険料と窓口での一部負担を併せ一割とした。しかし、現在の制度は、公費五割、支援金四割、保険料一割となっており、名前は同じでも、日医の理念とは全く異なった制度になっている。今後は、税金の投入を増やしたり、保険料の徴収方法や収入に見合った軽減措置の見直しが必要だろう」

 ―会員の医療機関に対し、後期高齢者診療料は医療現場に無用の混乱を起こす可能性があるとして、算定せず慎重な対応を呼び掛けています。その理由は。

 「厚生労働省の見解では『一人の患者の主病は一つ』。従って『一人の患者の主治医は一人』ということになり、全く現状を認識していない。高齢になるほど、多くの疾病や合併症を持っており、一人の主治医がそれらすべてに対応できるわけがない。細分化され専門化された医療の現状を知りつつ、このような見解を出すのは『医療費抑制』にほかならない」

 ―この制度は患者が自由に受診する「フリーアクセス」の制限になるとも言われています。

 「今回の後期高齢者診療料の導入によって、患者の受診に抑制がかかるのは明らか。なぜなら、『自分が同意し、署名捺印した医師にしか、かかれない』『別の医師には診てもらえない』という不安を持つ患者が多いためだ。しかし、この診療料は、厚生労働大臣が定める糖尿病、高血圧疾患など十三の慢性疾患のみを対象にしている。その他の診療科はこれまで通り自由に受診できる」「ただ、こういった制度の詳しい内容は十分に周知されているとはいえず、患者に伝わっていない。制度自体も非常に分かりにくいため、患者のフリーアクセスを阻害しかねない問題点は見直すべきだ」

 (熊本日日新聞2008年6月6日付朝刊)
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