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根絶への願い 私たちで被害は最後に
裁かれる薬害肝炎・九州訴訟判決を前に(5)
 「国に何度裏切られてきたことか。無力感すら感じる」。薬害肝炎九州訴訟を支援してきた、福岡県スモンの会事務局長の草場佳枝さん(58)=福岡市=は、怒りが収まらない。

厚生労働省前で、薬害根絶を訴える薬害肝炎訴訟全国原告団代表の山口さん=24日
 草場さんは二十一歳の時、医師に処方された整腸剤に含まれるキノホルムが原因で、胸から下が「氷に漬けられたようにジンジンしびれる」スモンを発症した。重い症状と、「伝染病」とされたための偏見・差別。「こんな苦しい思いは私たちだけにして」。七千人を超える被害者とともに、一九七一(昭和四十六)年から全国三十三地裁に提訴した。

 裁判は社会運動に発展し、被害者救済に加え、七九年九月に医薬品の安全対策を強化する「薬事二法」が成立した。当時の厚生大臣も被害者の前で謝罪し、再発防止を誓ったはずだった。「大臣の言葉に、やり遂げたという思いはあった」

 しかしこのころ、国は薬害スモンの全面解決に応じる一方で、C型肝炎の感染源になった血液製剤「フィブリノゲン」の取り扱いでは、信じ難い動きを繰り返した。

 サリドマイド事件を教訓に整備された、古い医薬品の安全性を確認する第一次再評価制度(七一―七八年)。国は旧ミドリ十字が七六年に品名を「フィブリノーゲン」から、「フィブリノゲン」に一字変更したことを理由に同製剤を「新薬」扱いにして、一次再評価の対象から除外した。

 七七年には、米国がフィブリノゲンの製造承認を取り消したが、ここでも国は海外の事例に目をつぶり、製剤を流通させ続けた。原告弁護団は「どちらかの時点で国が規制していれば、一万人以上が感染した八〇年以降の被害拡大は防げたはず」と主張する。

 「国民の健康ではなく、国は製薬会社の利益を守った」。草場さんは自らの裁判で果たせなかった薬害根絶の願いをこの訴訟に託す。

 今月二十四日、厚生労働省前。薬害肝炎訴訟全国原告団代表で、福岡市在住の山口美智子さん(50)=熊本市出身=はマイクを握り、昼食で庁舎から出てくる職員に訴えた。「薬害が繰り返されるのは、国が真摯(しんし)に反省していないからではないでしょうか。薬害は私たちで最後にしてほしい」

 薬害エイズ事件への反省から厚労省中庭に「誓いの碑」が建てられたのは九九年八月二十四日。以来、被害者たちは、この日を「薬害根絶デー」と名付け、国に薬害根絶を求めてきた。しかし、その後もヤコブ病や抗がん剤「イレッサ」などの薬害は後を絶たず、集会への参加団体は増え続ける。

 なぜ、「負の連鎖」を断ち切れないのか―。薬害HIV九州訴訟原告の四十代男性(熊本市)には、今回の訴訟で全面的に争う国の姿勢にこそ、根本的な原因があるように思えてならない。

 「私を含めてエイズ被害者の九割が、血液製剤によってC型肝炎にも感染した。国はそれを分かっているのに、放置したままだ。過ちから学ぼうとしない体質を、福岡地裁には正面から断罪してほしい」(渡辺哲也)=終わり

 (熊本日日新聞2006年8月29日付朝刊)
 

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