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医療従事者 「自分たちの問題だ」
裁かれる薬害肝炎・九州訴訟判決を前に(4)
 「情報がなく、医療現場では判断しにくかったというのが、現実の姿ではないか」

判決日の行動について話し合う支える会の事務局。中央が重松さん=23日夜、県民交流館パレア
 日本産婦人科医会の県支部長を務め、山鹿市で産婦人科医院を開業する井上尊文さん(73)は、院内の応接室で、多くの肝炎患者を生み出した血液製剤「フィブリノゲン」について語り出した。

 フィブリノゲン製剤は出産や手術時の止血剤として使われ、納入先は七千の医療機関に上る。自身は使った記憶はないという井上さんも、「そういう場面に遭遇すれば、患者を助けたいという一心で使っていたかもしれない」と話す。

 なぜか―。「国が製造を承認した薬でもあるし、海外の売血が使われていることも知らなかった。危険性の情報が現場の医師に行き届いていれば、被害の拡大は避けられたはず」。井上さんは残念がる。原料が国内の献血に切り替えられるのは、一九九三(平成五)年。製造承認から三十年近くたった後だ。

 九州訴訟弁護団の古賀克重弁護士は「製剤を承認した国や、危険な製剤を販売した製薬会社の責任は問われても、医師個人の責任まで問うのは難しい」と指摘する。

 しかし、薬害C型肝炎は医療行為によって引き起こされた「医原病」だ。訴訟には「自分たちの問題だとして、多くの医療従事者や医学生らが支援者として参加している」(古賀弁護士)という。

 薬剤師で、保険薬局の代表を務める重松公子さん(58)=熊本市=は、かつて働いていた病院で、フィブリノゲン製剤を出した覚えがあるという。

 「スモンのような薬害を起こすまいと、『ノーモア・スモン』を誓って仕事をしてきたつもりだった。それなのに、医師の処方せんに従ったとはいえ、ウイルスが混入しているかもしれない薬剤を、何の疑いもなく出してしまった」。薬に携わる者として、後悔の念が重松さんの胸を締め付ける。

 「何かしなければ」。昨年三月、重松さんは原告の女性を講師に招き、薬局内で学習会を開いた。「申し訳なかった」との強い思いから、今年三月に発足した「熊本の薬害肝炎被害者を支える会」の事務局にも参加した。

 以来、街頭署名に立ち、毎週開かれる事務局会議にも顔を出す。二十三日は、間近に迫った判決の日の行動を話し合った。「裁判の支援はもちろんだが、薬害を繰り返さないためにどうすればいいのか、不幸にして起きてしまったとき、どう対処すればいいのか。医療従事者に突き付けられた課題は大きい」。重松さんは力を込める。

 支える会代表を務める原田正純・熊本学園大大学院教授は言う。「薬に頼れなくなったら、患者は何を信じればいいのか。責任の度合いは違っても、医療不信を招いたという結果について、医療界全体が重く受け止めるべきだ」(本田清悟)

 (熊本日日新聞2006年8月28日付朝刊)
 

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