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もう一つの製剤 同じ苦しみ…認められず
裁かれる薬害肝炎・九州訴訟判決を前に(2)
 全国五地裁で係争中の薬害肝炎訴訟。初めての司法判断となった大阪地裁判決が言い渡された六月二十一日、九州訴訟原告の福田衣里子さん(25)=長崎市=は、一言も聞き漏らすまいと、傍聴席から裁判長の声に耳を傾けた。

30日に言い渡される薬害肝炎九州訴訟で、公正判決を求めるポスターを持つ福田衣里子さん=長崎市の自宅で
 分かりづらい判決だった。「勝っているんですかね」。隣に座っていた原告の仲間と、顔を見合わせた。三十分ほど時間が経過したとき、裁判長の言葉にあぜんとした。「クリスマシンについては、国と企業の賠償責任を認めることはできない」

 大阪地裁判決は、血液製剤「フィブリノゲン」による肝炎感染を拡大させたとして、国と製薬会社の責任を認めたが、もう一つの血液製剤「クリスマシン」は、「有用性、有効性が否定されていない」と判断。原告の請求を退け、明暗が分かれた。

 「同じような血液製剤が使われ、同じような被害を受けたのに、なぜ認められないのか。国や企業に責任がないというのは納得できない」。福田さんは唇をかみしめる。

 「クリスマシン」は、血友病患者らにHIV(エイズウイルス)を感染させ、「薬害エイズ事件」を引き起こした製剤としても知られる。本来は、血液を凝固させる第九因子が不足した先天性出血疾患(血友病B)の治療薬だが、医療現場では、新生児出血症など止血の目的で幅広く使われた。

 高校時代の福田さんは空手部に所属、副キャプテンとして活躍した。大学在学中、自分探しのため約三カ月間、ヨーロッパを旅行。パリで食べたクロワッサンのおいしさに感動し、パン屋になる夢をみつけた。

 「未来は、宇宙にまで広がっているように思えた」。無限の可能性を信じていた二十歳の時、検査で感染が分かった。出生時、血液型不適合で血液を交換した際、止血のために投与されたクリスマシンが原因だった。

 三十日に判決が言い渡される九州訴訟の原告で、クリスマシンを投与され、肝炎に感染したとしている原告は四人。いずれも二十代だ。

 同訴訟弁護団の石田光史弁護士は「クリスマシンは臨床試験の資料が提出されないまま、製造承認された。肝炎感染の危険性を考慮すると、当初から有用性があったとは言えない」と指摘する。

 二十二歳のとき、福田さんはインターフェロン治療を試みた。体中を襲う激しいかゆみ。歯磨き粉が使えないほどの舌の激痛。むし歯も一気に十本くらいできてしまった。想像を絶する副作用に苦しめられたが、ウイルスは排除できなかった。

 「自分の苦しみよりも、親や周囲に迷惑をかけてしまうのがつらい。これ以上、私たちのような薬害被害者を出さないでほしい」。二十五年の人生をかけた、福田さんの訴えだ。(岡恭子)

 (熊本日日新聞2006年8月26日付朝刊)

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