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明細付き領収書 「努力規定」に混乱も…
 厚生労働省の昨年四月の省令改正で、医療機関による「明細付き領収書」発行が努力規定になって一年が過ぎた。患者や医師が、どう受け止めているか探った。

 医師の治療行為は、行為別に点数化され、一点十円で計算される。患者は、計算された金額の原則三割を負担し、残りの七割は患者が加入する保険者が支払う。政府管掌健康保険に加入するサラリーマンなら保険者は国。農業者や商店主は国民健康保険の加入者が多く、保険者は市町村だ。

スーパーのレシート

 従来、医療機関は患者に金額と日付の入った領収書を渡していた。患者は、どの医療機関をいつ受診し、いくら支払ったか知るだけだった。どんな医療行為に、どれだけ費用がかかっているかまでは分からなかった。

 ところが小泉政権下の医療制度改革で医療機関の情報公開が進み、医療費の内容が分かる明細付き領収書の発行義務化が浮上。連合や健康保険組合などが「医療費削減や不正請求の歯止めになる」と後押し。努力規定として制度化された。

 ただ明細付き領収書の発行を迫られる末端の医療機関は「医療行為別の点数を明記している診療報酬点数表は、医師側と行政側さらに医師間でも考え方に差があるほど複雑。患者の理解や納得は得られない」などと不満が少なくなかった。「スーパーのレシートと一緒にしてもらっては困る」(熊本市の内科医)というわけだ。

医者じゃないし…

 ところが導入後は、患者側も“賢く”なっている。熊本市のパート女性(50)は話す。「支払い額だけの領収書をもらっていた時は、単にこれだけかかったかという気持ちだった。ところが明細付き領収書になってから、内容を調べるようになった。頭痛でMRI(磁気共鳴画像診断装置)検査をしてもらったが、保険適用でこの金額なら、適用されなかったらどうなるか計算して医療費の高さに驚いた」

 しかし混乱も生じている。高血圧症の高齢者(86)が、いつも受診している医療機関とは別の医療機関を受診した。一方は呼吸器の専門医、もう一方は循環器の専門医。診断方法や投薬する薬剤の種類が異なった。当然、支払う医療費に反映されるが、高齢者は「同じ高血圧の治療なのに医療費が違う」と納得いかない様子だ。

 どちらの医療機関も明細付き領収書を発行しているが、高齢者は「こんな細々と書かれても医者じゃないし分からない」

余分な投資

    明細付き領収書は、レセコン(レセプトのソフトを入れた専用コンピューター)を導入済みの医療機関は容易に発行できる。「インフォームド・コンセント(同意と納得)を十分やっている医療機関には余分な投資だ。明細を付けても領収書で本当の治療内容が分かるはずがない」。そう指摘する福岡市の内科医は、〇九年一月に導入が始まるレセプトオンライン請求システムを念頭にした“地均し”とみる。

 医療機関が、保険適用分の診療報酬(医療費)を社会保険診療報酬支払基金や都道府県国民健康保険団体連合会などに請求する際、現在は手書き請求している。これを、厚労省は一一年四月、全面的にオンライン請求に切り替える。レセコンはソフトを改良するとレセプトオンライン請求化に対応できるという。結果、個人の健康情報がデータベース化され、生涯つきまとう可能性もある。

  (熊本日日新聞2007年4月11日夕刊メディカル)
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