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患者の心つかめ 「力動的看護」 対話重ね個々の状況引き出す
 慢性疾患患者の増加などで、患者それぞれの性格や状況に応じた看護が求められるようになってきた。その基礎技術の一つに、心の動きをつかみながら看護する「力動的看護」と呼ばれる手法がある。このほど熊本市で技術習得のワークショップが開かれ、県内の一線で活躍する看護師らが学んだ。

力動的看護研究会のメンバーのコーディネートでワークショップに臨む参加者たち=熊本大医学部保健学科
 企画したのは2001年に発足した力動的看護研究会(事務局・東京都目黒区)。元慶応義塾大学病院看護師長の文野加代さんを会長に関東を中心に看護技術の普及活動を展開しており、九州では今回が初開催。

 セルフケアの視点

 力動的看護は、アメリカを中心に1960年代に提唱された精神分析論に基づいた手法を指す。これに対して現在、日本では行動科学論に基づいたセルフケアの考えが広く用いられており、同研究会はセルフケアの視点を重視しながらワークショップを進めた。

 ワークショップでは、乳がんと診断された行政書士の53歳の女性を患者に想定。入院に先立つ面談で看護師が患者の情報を引き出すという実践形式で行われ、参加者は患者役と看護師役それぞれを体験した。

 「看護師から『何でも言ってください』と言われると何を言っていいか分からなくなる」「患者に医療者側の情報を一方的に提供しているのではないかと、患者役をして気付いた」。参加者たちはいつもと勝手が違うだけに戸惑いながらも、“発見”を報告した。

 同研究会が特に強調するのが患者の「資源」を導き出すこと。文野会長は「資源とは患者の心に内在する思いを含め、患者を取り巻く環境」と説明する。その上で、想定患者の性格を変えたり、面談時間の制約を設けて試行を繰り返し、患者家族の状況や夫の病気への関心具合、医療機関に対する考え、心理状態などを浮き彫りにしていった。

 気持ち受け止めて

 現実の現場で看護師は、怒りをあらわにしたり医師に不信を持つ患者とのやり取りが少なくないという。日常業務に追われる中、そうした患者の資源をつかむのは難しい、という質問が参加者から上がった。

 これに対して、ワークショップのアドバイザーを務めた臨床心理士の小谷英文・国際基督教大学教授は「患者の心は、つらいことへの防衛と治療に臨むという適応の相反する反応が絡み合っている。それを患者と一緒に考え、何が手伝えるかを探るのが看護師の務め。患者から文句を言われても逃げずに、モヤモヤした気持ちを受け止めてあげてほしい」と助言した。

 一方で、看護師が患者から全人格を否定されたような気持ちになる場面も少なくないというが、その時も「看護の専門家としての立場で考えるべき」と小谷教授。「美しい雰囲気を持つ看護師を目指してもらいたい」と話した。

 参加者からは「患者に怒られたことが、実は資源の核心に近づいていると聞いて少し安心した」「患者のマイナスの資源をプラスにしてあげる視点が必要と気付かされた」などの感想が出た。

 文野会長は「看護師の思いこみや確認作業の不十分さが、患者の心の動きを理解する阻害因子になる。患者の資源や言動の背景を探るには、体系化されたトレーニングを継続していくことが大切」と呼びかけた。

 (熊本日日新聞2005年7月13日付朝刊くらし面)
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