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最期のとき、どこで…高齢者のみとりや容体急変
療養病床の行方 〜県内の現場から〜(3)
 熊本市近見の済生会熊本病院。九月下旬、高度治療室(HCU)の一角で、救急センター部長の前原潤一医師がため息をついた。「今年は救急ストップがとても多い。このままでは二千時間を超えるかもしれない」

高齢者の世話をする施設職員=上益城郡御船町の特別養護老人ホーム「グリーンヒルみふね」
 救急ストップ。病院のベッドがすべて埋まって、新しい救急患者を受け入れることができない非常事態のことだ。

 同病院では救急ストップした時間を分単位で記録している。二〇〇五年度は累計で約八百五十時間、〇六年度は約千時間もストップした。「これまでは夏場に止まることは少なかったが、本年度はすでに七百時間も止まっている。これからインフルエンザが流行する季節を迎える。心配だ」

 たらい回し

 救急車で搬送される患者の半数は高齢者といわれる。前原医師は「高齢者を受け入れている療養病床の削減が進むと、救急ストップがさらに増える」と危ぐする。

 療養病床には医師や看護師が常駐し、みとりや容体の急変にも対応できる。しかし、多くの介護施設や家庭では、そこまで準備はできていない。

 「自宅に帰った高齢者が急変すれば、救急病院に送られるだろう。救急ストップが慢性化して、働き盛りの人がたらい回しにされる事態が起きなければよいが…」

 退院患者の受け皿の一つが介護施設。高齢者のみとりに積極的に取り組んでいる上益城郡御船町の特別養護老人ホーム「グリーンヒルみふね」は今年、入所者二人を施設内で見送った。

 幸男さん(仮名、九十代)に変化が現れたのは今冬。職員がスプーンを向けても、口を結んで食事を拒否するようになった。「おやじは昔から頑固な人でした。自然の摂理だと思います」。家族は経管栄養などの対応を望まなかった。

 スポーツドリンクをゼリーにして口に含ませ、水分だけは補給した。家族のために部屋にソファを入れた。「清潔好きな人なので、ひげを奇麗にそってあげたい」と職員が提案した。

  手を握って

 数日後の夕方、血圧が下がり危篤状態になった。翌日朝、家族や職員が見守るなかで息を引き取った。「おやじ、頑張ったよなあ。お疲れさま」。息子が手を握って声を掛けた。

 同施設でも数年前までは入居者を病院に搬送していた。「最近は病院でなく、施設で安らかな死を望む家族が増えた。その希望に応えるのは施設の役割だと思う」と施設管理者の森田美保子部長。「ただ、納得できる対応ができるまでに、かなりの準備や話し合いが必要だった」

 県内にある特別養護老人ホームは百十四施設七千一床。県高齢者支援総室によると、二、三千人が待機リストに登録している。(梅野智博)

 (熊本日日新聞2007年10月2日付朝刊)
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