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介護の負担だれに…病院から離される高齢患者
療養病床の行方 〜県内の現場から〜(2)
 「さあ、今からご飯ですよ」。看護師がベッドの高齢者に声をかけ手を握ると、別の看護師が高齢者の鼻からチューブを通し始めた。

鼻にチューブを通す看護師。必ず2人組で対応する=熊本市の桜十字病院
 高齢者は、ほぼ寝たきりの状態。しかも認知症が進んでいる。二人の看護師は聴診器を腹部にあてチューブが胃に届いているかを確認。それから流動食を流し込んだ。

 チューブを手で引き抜いたり暴れたりすると、流動食が気管に入って肺炎を起こすことがある。食事が終わるまで一時間近く、二人は高齢者に付きっ切りだった。

 「この患者さんは療養病床が減らされると、自宅や介護施設に移ることになる。本当に大丈夫なのだろうか」。桜十字病院(熊本市御幸木部)の大里まり子看護師長は表情を曇らせた。

 3つの区分

 「医療型」療養病床の入院患者は病状の軽重によって、三つの医療区分に分けられる。

 例えば、人工呼吸器や二十四時間の点滴が必要な重症の患者だと区分三。脊髄(せきずい)損傷や多発性硬化症などの難病は区分二。三や二に該当しない認知症や慢性疾患だと、最も軽い区分一になる。

 国は昨年七月、区分一の患者は「医療の必要性が低い」として診療報酬を大幅に減額。区分一の患者が多い病院は採算割れする状態になった。チューブ流動食の認知症患者は、どんなに手が掛かっても区分一だ。

 かつて、区分一の患者は全体の53%を占めていた。それが、報酬改定後の調査では31%に減った。「患者は、どこにいったのだろうか」。医師団体の職員は心配する。

 増える孤独死

 一九九〇年から警察医を務めている本庄内科病院(熊本市新外)の本庄弘次院長は「最近、介護サービスの職員が自宅で死亡している高齢者を発見するケースが増えている」と話す。

 本庄院長によると、全死亡者のうち孤独死などの割合を示す検視率は、十年前の熊本市は7%前後だった。それが〇六年は13・0%に増えている。「高齢化や核家族化が進み、一人暮らしの高齢者が増えたのが原因だろう。療養病床が削減され、自宅に帰る高齢者が増えれば、検視率はさらに高くなる」と危ぶむ。

 本庄院長には忘れられない事件がある。十年ほど前、認知症の妻の介護に疲れた男性が妻を殺して自殺した。しかし、駆け付けた家族は錯乱することもなかったという。「もしかしたら『やっと介護が終わった』という安ど感もあったのではないか。それほど大変な介護だったのだろう。もう、あんな事件を繰り返してはいけない」

 県療養病床施設連絡協議会のメンバーだったベテラン医師は力説した。「かつての大家族と違い、もう家庭に介護力はない。介護のストレスから高齢者を拘束したり部屋に閉じ込めるなどの虐待が起きるかもしれない。国の削減策は性急すぎる」(梅野智博)

 (熊本日日新聞2007年10月1日付朝刊)
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