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経営改善へ組織見直し決意
医療過疎 〜地方から〜(4)
 午後九時。荒尾市民病院の夜間外来の受け付けが、照明にぽっかりと浮かび上がる。時折、保護者に連れられた子どもの姿が明かりの中に消えていく。

ぜんそくセンター閉所式であいさつする樋口院長。「続けたい思いもあるが…」と悔しさがにじんだ=3月24日、上天草市龍ケ岳町の上天草総合病院
 三月、上天草市龍ケ岳町樋口島の渡し船に、乗客五人が乗り込んだ。行き先は上天草総合病院。開業医がいない同町など、天草上島東地区の初期治療から一定レベルの手術までを担う市立病院だ。

 二週間に一度は通院するという女性(74)は「ここは(診療科目が)何でもある。なかなら、八代か熊本に行かなん。経営難でなくなる話もあったけど、今度から市が監督するらしかよ」。

 市は四月、病院の経営改善に向け、地方公営企業法を全部適用(全適)した。県内自治体病院で初の試みだ。

 全適は、病院管理者が人事権や予算編成権を持つ。経営責任が明確になり、経営状況に合わせて人件費を抑制できるのがメリット。職員の公務員の身分は保障される。

■15年連続赤字

 病院は移転新築した一九九一(平成三)年から十五年連続で赤字決算。〇五年度末で累積赤字約十九億円、不良債務は約三億三千万円に上る。

 市は〇五年二月、開業医らも交えた運営審議会を発足。その中で民間コンサルタントが示した改革の選択肢には、「民間譲渡」「病院機能の分離」なども含まれていた。

 「市の財政支援は多くは望めない。全適しかないと思う」。昨年六月、四回目の審議会で、委員でもある樋口定信院長が切り出し、答申に盛り込まれた。市は二月、五年間で不良債務解消という数値目標を示した上で、全適導入を決めた。

 経営不振には医師不足が大きく影響している。一月現在の常勤医は十七人。高齢化に対応する整形外科医は五年連続で不在だ。定員の二十四人がそろえば、医業収入は〇五年度で約二十六億円(実際は約二十三億円)が見込め、黒字決算になったという。

 同病院は「医師は勤務条件が重要。一診療科一人の体制だと医師の負担は大きい。田舎だけに家族の反対で断られたケースもあった。研修医制度で確保がさらに厳しくなった」と言う。

 診療報酬の改定も響いている。患者数は新築前の一九九〇年度に比べ、約二万七千人増えているものの、長期入院への報酬などがマイナス改定となり、〇六年度改定による収入減は年間約千六百万円と試算している。

 一方、人件費は〇五年度、過去二番目に高い十六億二千万円。医業収入に対する比率は約69%に上る。

 総職員数は四年連続で減少しているが、正職員で五十歳以上は二割を超えるなど高齢化。移転新築の際、バブル期の高利で借りた資金返済(年間二億千六百万円)が重くのしかかる。

■ぜんそくセンター

 「民間に委譲すれば、不採算部門が切り捨てられ地域医療は守れない。多くの職員は職を失う」「地域の医療と雇用を守るために健全経営を」と樋口院長。

 全適を控え同病院は二月、診療報酬で有利になるよう、看護配置を「十対一(患者十人に看護師一人)」に手厚く切り替えた。年間約三千八百万円の収入増につながるという。小児ぜん息患者を三十八年間受け入れ、全国に注目された「ぜんそくセンター」も三月で閉所、不採算部門にメスを入れた。病床数の再編も検討している。

 ただ、今のところ、医師不足に対する国や県の抜本的解決策はない。市の財政支援も不透明だ。

 樋口院長は言う。

 「職員の給与削減は最後の手段。ただ、経営が厳しい場合は『痛み』も必要だ。病院がなくなれば、田舎に住めなくなり過疎化が進む」(高橋俊啓)

 (熊本日日新聞2007年5月16日付朝刊)
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