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小児科医不足 「当番」で支える
医療過疎 〜地方から〜(3)
 午後九時。荒尾市民病院の夜間外来の受け付けが、照明にぽっかりと浮かび上がる。時折、保護者に連れられた子どもの姿が明かりの中に消えていく。

荒尾市民病院で時間外診療を行う、開業医の足達正昌医師。市民病院の小児科医不足を補うため、地元医師会が当番で「空白」を埋めている=荒尾市
 医師引き揚げで、常勤小児科医が不在となった同病院。小児救急医療は、平日の午後七時から同十時までの間、荒尾市医師会(高橋洋会長)の当番医制度が担う。医師不足に苦しむ自治体病院を、開業医らのネットワークが支える試みだ。

 開業医の当番は、月に一〜四回のペースでやってくる。市内で内科医院を開業する足達正昌医師(62)は当番の日、医院での診察を終えると、夕食を取る間もなく市民病院に駆け付けた。

 午後九時半ごろ、小学生の男児が両親に付き添われて来院した。全身に発しんが出たという。

 「何時ごろ出始めた?」「飲んでいる薬は?」「夕食は何を食べた?」「アレルギーはある?」

 足達さんは両親らに細かく問い掛けながら診察し、当直用の「小児救急マニュアル」で常備した薬の種類などを確認して処方。付き添った親は安どの表情を浮かべた。結局、この日の患者は二人だけだった。

■県境を越えて 

 当番医制度がスタートして約二年。市医師会によると昨年度の利用者は八百十人。風邪やインフルエンザなどの流行で、一〜三月が多いという。

 当番医スタートのきっかけは、荒尾市民病院にいた常勤小児科医二人の引き揚げ。夜間小児救急が「空白」となり、県内の患者らが、県境を越えて大牟田市立総合病院に集中。同病院の二次医療(重症患者)の拠点機能にも懸念が生じたためだ。

 荒尾市医師会は、当時すでに、開業医による夜間小児診療の当番医制度を実施していた大牟田医師会と協議。両医師会は隣接市のメリットを生かし、内科医と小児科医が相互に応援し合う組み合わせで、県境を越えたネットワークをスタートさせた。

 「子どもの病気は、急変しやすく判断が難しい面もある。しかし医師がいなくなっても、診察を待つ子どもたちはいる」と足達さんは当番医制度の意義を話す。

 ただ現状の体制にも、課題は少なくない。開業医の負担感に加え、「できれば専門医に診察してほしい。診療体制が整っている方が、安心して受診できる」(荒尾市の母親)など、診察へのニーズの高まりなどだ。入院が必要な重症患者の場合は、県境を越えて大牟田市立総合病院を頼らざるを得ない。

■地域内で完結を 

 小児科医不足は他地域でも深刻となっている。常勤三人がいた山鹿市立病院では、四月からは一人に。それまで地元医師会と連携し、週三回の時間外診療と専門医の二十四時間呼び出し体制をとってきたが、大幅な後退となり、今後の取り組みを模索している。

 荒尾などと同様の当番医体制を実施している玉名郡市医師会の前田利為会長は「救急救命センターを持つ急性期型病院を、荒尾・玉名郡市・鹿本郡市で新設すべきだ」と提言する。

 「住民にとって大切なのは、地域内医療が完結できる医療水準が確保されることだ。十数分で搬送できる急性期病院があれば、住民の安心につながり医療格差も是正できる」と前田会長。

 こうした体制の実現のためには、既存の公立病院のスリム化などに取り組む必要があるという。(小嶋亜紀子、岩瀬茂美)

 (熊本日日新聞2007年5月15日付朝刊)
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