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| 救急車がいない? 域外搬送増え手薄に |
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「断腸の思いだが、もう限界。スタッフの負担は重く、このままでは一般診療に影響が出かねない」。二〇〇六(平成十八)年四月末、上益城郡山都町の矢部広域病院(医療法人杏章会、坂本彰一郎理事長)は三十八年間続けた救急告示病院の看板を下ろした。町では救急車の長距離搬送が増え、“緊急時に救急車不在”という不安を抱えた状態が続いている。
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| 出動する山都消防署の救急車。熊本市に搬送すると、戻ってくるのに3―4時間かかる=山都町 |
救急告示病院は、救急医療の知識、経験を持つ医師が常時診療に従事していることなどを条件に県が指定、三年ごとに更新する。二十四時間救急車を受け入れ、病状の一次判断や応急処置を行う。
同病院は一九六八年から指定を受けてきたが、「地方にはなかなか医師に来てもらえず」(同病院)慢性的な医師不足に悩んできた。前年、常勤医師一人が体調を崩して退職。補充も難しく、指定更新を断念。県の救急医療体制での二次救急施設指定も返上した。最寄りの救急病院は、町中心街から宮崎県寄りに約二十五キロ離れた町立病院(馬見原)となった。
指定更新を求めてきた甲斐利幸町長は、「地域にとって深刻な事態」と声を落とす。
■半数が熊本市へ
同病院の指定辞退を受け、郡医師会や消防、行政などでつくる上益城地域保健医療推進協議会・救急医療専門部会は、救急搬送体制について会合を開いた。
熊本市の二倍の広大な面積を持つ山都町。上益城消防本部・山都消防署の救急車は、予備の旧型を入れて三台。人員は本署が七人、馬見原出張所が三人。救急車には三人が乗り込むため、通常は同時に二台しか出動できない。
(1)町立病院への急患集中(2)(宮崎寄りの)町立病院で応急処置し、熊本市に運ぶと時間的にかなりのロス(3)救急車が熊本市の病院に搬送し、戻ってくるのに三―四時間。救急車が出払って不在ということも起きかねない―など、深刻な問題が指摘されたが、今後の対応は「状況を見守り方策を模索する」としただけで終えた。
同町の救急車搬送は年間七百回ほどで、半数近くが熊本市へ。「長距離搬送は、救急車不在の可能性に加え、隊員の負担も増大する」と同消防本部。対策として、町広報誌などで「救急車の適正利用」を住民に訴えている。しかし、「救急車要請の約七割は、救急不要というデータもあるが、あくまで結果論。病院で検査をしないと何とも言えず、控えてほしいとはいえない」のが実情。
関係者の一人は「小手先の努力でできる対応策なんてないことはみんな分かっている。これがどうにもできない地域医療の現実だ」と嘆く。
■いつかは崩壊
救急指定を辞退した矢部広域病院も「当直医の状況次第で」と、夜間でも、可能な限りの急患受け入れは続けている。
一方、地域唯一の救急指定となった町立病院では、月平均七件ほどだった救急車受け入れ数がほぼ倍増。同病院も常勤医師は定数に満たない状態で運営しており、「いつまで持ちこたえられるのか…」。
「医療も、救急隊もぎりぎりの状態。何かしら抜本的な改革がないままなら、いずれ地方の救急医療体制は崩壊する」。梶原光生・同消防本部消防長はこう指摘し、「救急車不在の状況が発生していないのもたまたまかもしれない…」と消えない不安を口にする。(上田良志)
(熊本日日新聞2007年5月14日付朝刊) |
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