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お産ができない… 熊大“苦渋”の医師配置策
医療過疎 〜地方から〜(1)
 地方の「医師不足」が深刻化している。県内の自治体病院などでも、診療科の閉鎖や縮小などを迫られる施設が相次ぎ、医療サービスの“格差”につながる、という懸念も広がっている。

牛深市民病院の産婦人科が週2回の外来のみとなったことなどを説明するための張り紙=天草市牛深町
 「六月に出産予定というのに、突然病院がなくなるなんて…」

 天草市牛深町の主婦(23)は、不安げに語る。自宅から車で五分ほどの牛深市民病院で出産を予定し、通院していた。しかし、今春から出産ができなくなると、二月になって知らされた。

 「近くて、知り合いの助産師もいたので選んだのに…。本渡地域の病院で出産することになるけど、何かあった時、一時間かけて移動するのは心配」と困惑気味に話す。

 牛深市民病院産婦人科は昨年三月、それまで医師を派遣していた福岡大が、医師不足を背景に医師を引き揚げた。病院幹部は、地域の中核病院を存続させようと奔走、代わって熊本大が医師を派遣した。

「1人」のリスク

 しかし、常勤医一人の体制は「勤務も過密となり、医師も患者もリスクが高い」(熊本大)。日本産科婦人科学会は昨年四月、産婦人科医の勤務の改善のために「ハイリスク妊娠・分娩を取り扱う公立・公的病院は、三名以上の産婦人科医師の常勤が原則」と緊急提言、熊大も三月末での、牛深市民病院からの引き揚げを決めた。その後は週二回、非常勤医師が外来診療を行っている。

 今年一月末、熊本大学医学部を天草市の安田公寛市長と市議が訪れた。産婦人科の常勤医師を引き揚げる理由や経緯について、大学側から話を聞くためだった。

 「ずいぶん悩んだが、大学も医師が不足し、ない袖は振れない」。熊大の片渕秀隆教授は、引き揚げの経緯と今後の体制について説明した。

 安田市長は「医師不足という現状は理解しているが、住民の不安を考えると残念」と話す。

 産婦人科医不足は全国的に深刻だ。日本産科婦人科学会によると、常勤医師数は二〇〇三年四月の五千百五十一人から〇五年七月は四千七百三十九人に8%減った。

 当直や深夜の緊急呼び出しなどが多いなど勤務が過酷な上、訴訟などにつながるケースも多く、志望する若手医師は減っているという。

県とも相談

 熊本大も状況は同じ。産婦人科の医局員は〇六年は二十人。一九九〇年の三十七人と比べて半分近くになった。「内科系が勝ち組ならば、産婦人科は負け組」と言う片渕教授は「医療の進歩で仕事量は何倍にも増えているのに、医局員は半分。医療体制を見直し、医師を拠点に重点配備することも必要」。

 熊本大は、牛深市民病院と同時に阿蘇郡小国町の小国公立病院からも産婦人科医を引き揚げた。代わって、天草地方は天草中央総合病院を三人体制に強化。阿蘇地方も阿蘇市の民間病院に医師を集約させた。

 片渕教授は「県とも相談しながら準備を進めてきた。医師が足りない中で、地域の産婦人科医療体制を維持し、安全な出産ができることを考えた結果」と強調する。

 ただ、周産期医療を考えると産科と小児科の連携は不可欠だが、「強化される天草中央は小児科が医師不足で休診。大学内の横の協力も必要」と言う医師もいる。

 これまで、牛深市民病院での出産は、年間百件程度。牛深地域にほかに産婦人科は無い。

 二人目の出産で、福岡県から牛深の実家に里帰りした女性(36)は「里帰り出産は難しくなる。三人目を産むとしたら、向こう(福岡県)を選ぶかもしれない」と語った。(藤山裕作)

 (熊本日日新聞2007年5月13日付朝刊)
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