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存続か廃止か…熊本産院 松尾勇院長に聞く
安全な医療提供 存在に意義
◇まつお・いさむ 熊本大医学部卒。同大大学院修了。医学博士。同大医学部講師、荒尾市民病院産科部長を経て1990年より現職。61歳。
 存廃問題を抱える熊本市民病院付属熊本産院(熊本市本山)。廃止を提案した市に対し、市議会は今春までの二年間の経営動向などを基に判断することにしている。三月末までに赤字幅が大幅圧縮される見通しの中、公的医療機関としての役割をどう位置づけ、果たしてきたのか。松尾勇院長(61)に聞いた。(田端美華)

 ―二年間の取り組みを教えてください。

 「患者が利用しやすいよう土曜診療を始めたり、新たに育児塾を開催したりしました。二カ月に一回だった産前・産後の両親学級を毎月開くようにもしました。高次医療を担う熊本市民病院とは異なり、より家庭的な雰囲気を大切にし、母子の健康管理に重点を置き運営してきました」

 ―分娩や助産の状況は。

 「一九九八年には分娩が約四百九十人まで増えました。しかし、存廃問題が出たことで減り、二〇〇六年度は近年では最低の二百二十八人まで落ち込みました。〇七年度は少し持ち直し、二月末現在で計二百四十八人。〇六年度計より二十人増えています」

 ―切迫流産と切迫早産の延べ入院患者数が〇七年度は増えています。

 「対象となる患者がたまたま増えただけです。例えば、初めての妊娠を流産し再び妊娠したが出血がずっと続いたなど、さまざまです。昨年から切迫流・早産の患者には少しでもリスクがあれば入院を促すよう、より慎重に判断していることも関係しています。というのも、昨年、しばらく起きていなかった母体搬送(患者を高次医療を行う医療機関に転院させること)が二例起きたのです。母子が離れ離れにならないよう、母体搬送はできるだけ避けたいし、母子の健康を考え、早い段階から、早産防止、治療のために入院するよう患者に説明しています」

 ―二〇〇六年四月、熊本産院は熊本市民病院の付属機関になりました。医療の方針と役割は。

 「お母さんと赤ちゃんがハッピー(幸福)になれるのが医療方針で、以前と変わっていません。目の前にいる患者のプラスになるよう最善の努力をする。赤字や黒字は関係ありません」

 「熊本市民病院はハイリスクの母子を集中管理したり、超低出生体重児(千グラム未満)を受け入れるなど高次医療を担当。熊本産院が対応できないのは、がんの治療と妊娠三十四週までの早産。市民病院との役割分担は、付属機関になる前から変わっていません。熊本産院は妊娠・出産に伴う母体管理などの一次医療から、異常な妊娠・分娩、子宮筋腫(きんしゅ)などさまざまな手術まで、二次医療的な分野まで踏み込んでいます。現場の判断で行っています。院長として目の前の患者のために、やれる医療はやりたいのです」

 ―自治体病院に求められる役割は。

 「民間病院の手本になり、市民が求める質の高い医療を提供する義務があります。今、産科に求められているのは安全な医療。県内では複数の産科医を確保して安全な医療を提供するよう努めています。しかし、産科医不足の中、複数の医師確保は難しい面もあります。産院には、二人の医師がおり、存在意義があります」

 ―出産費用の助成といった助産制度が、〇六年からは産院のほか、熊本市民病院などの四医療機関でも利用ができるようになりました。

 「施設が増えたことは良かった。ただ、助産を利用する人たちは経済的な問題だけでなく、家庭などにさまざまな問題を抱えている。例えば、シングルマザーやホームレス、DV(家庭内暴力)を受けている女性を支援する受け皿に産院はなっています。時には、看護師長が一日つきっきりで対応したり、十分に時間をかけています。民間ではなかなか対応が困難なケースに応じることができるという点に、(公的)産院の役割があります」

●6月市議会で存廃に結論

 熊本産院が果たすべき機能や公的病院としての位置づけ、収支などを巡る議論は、ここ数年続いている。

 市の医療機関の赤字は一般会計から補てんされる。産院は分娩(ぶんべん)数が減少し、慢性的な赤字体質になっていたため、市は行財政改革の一環として二〇〇五年、廃止を打ち出した。当初の計画は、市民病院などに病床やスタッフの一部を移し、新たに母子訪問指導や日帰り産後ケアなどのセンターを整備するというものだった。

 しかし、「経済的困窮など社会的弱者の受け皿になっている」「産院独自のきめ細かな医療がある」などと存続を求める声も強く、二〇〇六年三月の市議会で、結論が二年後に先送りされた。

 〇七年度は経営が改善されており、市の試算では昨年四〜十二月のペースで推移すれば三千万円の赤字に止まる見込み。

 幸山政史市長は「五月末の決算確定を待って、議会と相談する」としており、六月市議会で結論が出る見通しだ。

 (熊本日日新聞2008年3月15日付朝刊)
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