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熊本産院(熊本市)存廃問題 赤字大幅圧縮で波紋
3月末までの収支をもとに、存廃が検討される熊本市民病院付属熊本産院=熊本市本山
 3月末の収支で存廃を決める熊本市民病院付属「熊本産院」(熊本市本山)の赤字額が大幅圧縮され、存続条件の「年間赤字3000万円以下」になる可能性も出てきた。切迫流産や切迫早産の長期入院患者が増えたためで、産院を所管する市民病院は「経営努力の結果」としている。ただ、分娩(ぶんべん)数はほぼ横ばい。「これだけの長期入院治療は、普通分娩や産後ケアといった本来の役割とかけ離れている」との指摘もあり、波紋を呼んでいる。

 熊本産院は一九五〇(昭和二十五)年、児童福祉法に基づき、当時、県内で唯一の「助産施設」として設置された。近年は患者数の減少で赤字が増加。存廃議論が沸き上がった〇三年度決算では一億三千五百万円に膨れ上がった。そこで市は行財政改革の一環として〇五年十二月に産院廃止関係条例案を提案。翌年三月の市議会で、公的病院としての産院の役割を検討した上で、「赤字三千万円以下」の条件も加え、二年後をめどに存廃を決めることにした。

 産院は収支改善策としてこの二年間、人員削減などに取り組んできた。さらに、〇七年度からより力を入れた切迫流・早産では百二十日程度の超長期入院にも応じ、延べ入院日数は〇六年度の七百二日から〇七年度は千七百四十日(いずれも十月末までの比較)に、千日以上も一気に増えた。

 この結果、〇七年度の延べ入院患者は十二月までで六千二百十五人となり、〇六年度の年間五千三百八十三人を約千人も上回った。昨年十二月時点での市の試算によると、このペースで推移すれば、今年三月末の〇七年度決算は三千万円の赤字にとどまり、存続条件を赤字額ではクリアすることになる。

 ただ問題もある。産院の最大の役割である「助産」や「分娩」の患者は、収支全体を押し上げるほど増えていない。〇六年度は分娩数二百二十八人、〇七年度も十二月末で二百四人にとどまる。

 そもそも熊本産院は、出産資金に困っている妊婦を助けるのが設置の目的。産後ケアや母子の健康に関する相談などを主な役割としている。長期入院を必要とする切迫流・早産の対応は高度医療の範囲とする意見もある。

 こうした状況について、県内のベテラン産科専門医は「切迫流産の八割程度が染色体異常などによる胎児側の原因で、母体の入院は少なくなっているのが現実。切迫早産も極小未熟児に対応できる病院に転院させるのが一般的だ」と指摘。「産院という一般病床でこれだけ入院数が出ているのは異様に映る」と首をひねる。

 また、産院の存廃について議論を重ねてきた複数の市議からは「設置目的である分娩や助産はあまり増えておらず、設置目的とますます懸け離れた状況になっている」との意見もある。

 これに対し、産院を所管する松田正和市民病院長は「昨年から早産予防により力を入れ、経営努力をした結果。ただ産院の本来の目的に合っているかどうかは、当初廃止を提案した執行部側として言える立場ではない」という。

 幸山政史市長は二月十五日の会見で「五月末に本年度決算が確定するのを待ち、議会と相談して判断する」と発言、六月市議会で結論が出る見通し。産院の役割を市と市議会がどう整理するのか、注目される。(田端美華、渡辺直樹)

(熊本日日新聞2008年3月3日付朝刊)
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