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| 医師不足へき地にも影 「常勤」確保はもちろん…派遣医やりくりも大変 |
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交通や地理的条件に恵まれず、医療の確保も困難な「へき地」。高齢化が進む中、小さな診療所などが地区の人たちの健康と安心を支えている。しかし、常勤医師の確保は容易ではなく、非常勤医を派遣する支援病院もそのやり繰りに苦労。新人医師の研修制度に端を発した地方の医師不足が、へき地医療にも深刻な影を落としている。(松岡茂)
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| 球磨郡多良木町の槻木地区で往診する、公立多良木病院の良永寛子医師。医師不足はへき地医療にも影を落としている |
球磨郡多良木町の槻木地区。町中心部から、峠を越えて約二十キロ。深い谷に民家が点在し、約八十世帯に百六十人が暮らす。高齢化率(六十五歳以上の割合)は67%。
町槻木診療所に常勤医師はおらず、週に三回、球磨郡公立多良木病院が医師を派遣する。
■地域の支え
十六日の派遣は内科の良永寛子医師(31)。午後一時過ぎ、看護師と診療所の車で槻木に向かう。
診療所で待っていた二人を診察。その後、車で三軒を往診。寝たきりの黒木幸八郎さん(74)宅では近所の三人も診察を待っていた。診察の後はお茶が出て、話もはずむ。「子どもらは熊本市に出て、二人暮らし。私じゃ病院にも連れて行けん。ここまで来てくれて助かります」と妻のツル子さん(75)。
週三日の診療所開設、二週に一度の往診。十分とはいえないが、「暮らす人の安心感という意味では、大きいものがある」と良永医師。
ただ、支援する病院も医師不足は深刻で、やりくりに苦労。多良木病院内科部長の春口洋賜医師(56)は、「このままではへき地医療も窮地に追い込まれる」と言う。
■現場の悩み
県内の「へき地」は三十五地区=表。約二万人が暮らす。集落密度が低い十八地区は無医地区だが、一定集落がある十七地区には自治体が設置する診療所がある。
しかし、十七診療所で常勤医師がいるのは九施設。このうち、地元で医師が確保できているのは四施設。残りの五施設には、自治医大卒で「義務年限」(地域医療への従事義務がある九年間)内の医師が、県職員として派遣されている。
常勤医がいない八診療所には、「へき地医療拠点病院」である多良木病院、山都町立蘇陽病院、上天草市立上天草総合病院が週に二〜三回、医師を派遣する。医師派遣を支えるため、拠点病院にも自治医大卒の計四人が県から派遣されている。
県は、診療所への医師派遣などを円滑に行うため、「へき地医療支援機構」(事務局・多良木病院)を設置している。
機構によると、拠点病院から診療所への医師派遣は年間延べ六百日ほど。しかし、機構専任担当官でもある春口医師は「全般的に医師が足りない中、県の派遣医師も、重要なスタッフ。週三日、診療所派遣で欠ける日は、他の医師がカバーするのに苦労する」と、運用の厳しさを訴える。
診療所医師が学会や研修で不在になる時、代わりの医師を派遣する「代診」の調整も機構の役目だが、医師不足の窮状を互いに知っているためか要請は少ないという。
「医療への要望、期待はへき地医療でも高まっている。診療所医師も、どんどん外に出て勉強する環境を整えたいが、医師不足で取り組みは難しい」と春口医師。
■定着に課題
へき地医療などの担い手を育成しようと設立された自治医科大(栃木県下野市)。県によると、県出身の卒業生はこれまで五十九人。うち、義務年限内の十九人は、研修中の七人を除き、診療所や拠点病院でへき地医療に従事している。
一方で、義務年限を終了した四十人を見ると、県内に残っている医師は二十一人と約50%。地元定着率の全国平均は71・1%で、熊本は全国でも最低クラス。へき地医療を困難にしている原因の一つとも指摘される。
自らも自治医大卒業の春口医師は「県が地域医療、へき地医療の明確なビジョンを示さず、医師たちにアプローチしなかったことも原因にある」と指摘。「今後は大規模病院などに一定枠で“県の医師”をプールできる方策も必要」と話す。
県は自治医大出身者の地元定着を進めるため、「熊本大医学部と自治医大出身者をつなぐネットワークづくりなども取り組む」としている。
(熊本日日新聞2007年5月28日付朝刊) |
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